第29章 瞳を閉じて、こっちに来て。❥豊臣秀吉
先程の言葉を言い切った華に少し探りを入れてみる。
「お前はどうして俺に好きな奴がいると思ったんだ?」
「っ、だから秀吉さんと女の人が城下で歩いててっ...」
「それは、町娘っていう可能性もあっただろ?」
「っ、!」
その言葉に反応した華がはっと俺を見る。
華はいつも俺が町娘に囲まれている様子を見てきていた筈だ。
ならどうしていつものことだ、と受け取らなかったのか。
何か、他の理由がある気がする。
そう思った俺はさらに探りを入れる。
「お前がそう思ったのは、それだけじゃないだろ?他に、何か、理由があるだろ?」
俺が確信めいた言い方をすると...
華は諦めたのかぽつりぽつりと語りだした。
「...っ、文を、見たの。」
華から語られた話によると。
俺に文を渡したあと、俺に言い忘れたことがあって俺を追いかけたらしい。だが俺が部屋に篭ってしまっていたせいかなかなか言い出せずに少し時間を置いて部屋に入ると、俺が眠っていて、横に大量に置かれた文が目に入った。
「それで、好きだって書かれた文を見つけて...秀吉さんはこの人が好きなんだなって思ったの。この文を渡されたのは私だから...顔も覚えてたし。」
そう言いながらも華は視線と肩を落としていく。
その様子にも愛しさを感じて抱き締めたくなる衝動を抑えた。
そして今度は俺の気持ちを伝えていく。
「...確かに、好きな奴はいる。そいつは....」
「っ、」
華は何を言われると思ったのか肩をぴくっと揺らした。
だけどその相手は町娘なんかではなく...
「お前だ。華。」
「!!」
俺がそういうのと同時に華が目を見開いて俺を見つめた。
信じられない、と目からも感情が読み取れる。
「信じられないか?」
俺がそう聞くと華はうんうんと大きく首を振った。
「...秀吉さんは、あの子が好きなんだと思ってたからっ...」
「残念だな、俺が好きなのはお前だ。」
俺がまた言い切ると華が幸せそうな笑みを浮かべた。