第29章 瞳を閉じて、こっちに来て。❥豊臣秀吉
「秀吉さんには、好きな人がいるでしょ...!!」
「!?」
半ば叫ぶようにして言った華。
その言葉に少し焦りを感じる。
(え、まさかバレたのか....?)
俺が華を好きなことがバレてしまったのか。
そう思って俺が硬直していると、華がまた俺を睨みつける。
「ほら、やっぱりッ....!秀吉さんには好きな人がいるんでしょ!昼間に城下で会ってた...っ」
そこまで言うと華は言ってしまったという様に顔色を変えて慌てて口を抑えた。
それに俺は目ざとく反応する。
(昼間に城下で会ってたって....あの、町娘のことか?)
それ以外には女になんて会っていないし、思い当たらない。
その場所に華も居たのか。
なんて頭で思っていると。
ふいに一つの考えがぽんと浮かんだ。
まだ、確信は得られないが...
もしかして華は....
嫉妬、したのか?
俺があの町娘と会ってたから?話してたから?
華は、あの町娘に、嫉妬したのか?
(...いや、さすがに自惚れすぎか。)
浮かれた考えはすぐに打ち消して華に向き合う。
「なぁ、お前どうしてそれを...」
「っ、反物屋さんに行ってたらたまたま見かけてっ...すごく仲良さそうだったから...秀吉さんに恋仲の人がいるんだなって分かったのっ...」
そう言いながらも語尾は下がっていく。
目尻も下がって頬も紅潮しているその様子に。
俺は確信した。
華は、嫉妬していてくれていたのだと。
だから、俺とあの町娘が気になったのだと。
何にも思ってない奴が他の女と会ってたって気になるか?
俺だったら、気にならない。
じゃあ何故気になるのか...
俺には分かるが。
でも、当の本人はきっとまだその気持ちに気づいていない。
だけどきっと...俺は、自惚れていいよな?
そして、お前がその気持ちをまだ分かっていないなら...
俺が、教えてやるよ。