第29章 瞳を閉じて、こっちに来て。❥豊臣秀吉
「分かりました、私...私が必要とする男の方を絶対に見つけます!秀吉様のような、胸を張って必要としていると言えるような、素敵な方を見つけます!」
その目はもう、迷いは無かった。
そしてその町娘はさっと立ち上がると、
「秀吉様、ありがとうございました。私は...私が求めるべきものが、分かった気がします。.....どうか、秀吉様も、そのお方と幸せになってください。」
そして最後に町娘はにこっと笑う。
その顔は今までに見たことがないくらい、綺麗に輝いていた。
「おお、ありがとう。」
俺がそう答えると、その町娘は一礼して俺の前から去っていった。
(...きっと、良い子なんだろうな。)
さっきの態度から良い子だった雰囲気が伝わる。
きっとあの子なら、すぐに必要としている人を見つけられるだろう。
そして今度は...俺が必要としている女を、手に入れなければ。
そう思うとすぐに浮かんでくるあの笑顔。
それに直ぐにでも会いたくなって俺は城への道を急いだ。
(あれ、いないのか?)
城に戻って一番に華の部屋を尋ねるもそこには誰もいない。
(なんだ、会えると思ったのにな。)
少し会えないだけでこんなに落胆する自分にもはや笑えてくる。
だが会えないものは仕方がない。
そう思って踵を返すと...
「っ、秀吉さん」
小さな声が後ろから聞こえた。
その声に慌てて振り返ると、華がぽつんと佇んでいた。
それに嬉しくなってぱっと華に駆け寄る。
「おう、奇遇だな。こんなところで会えるなんて。」
訪ねに来たとは流石に言えない。
すると華は何故か顔を曇らして俺に向き合った。
「そ、そうだね。じゃあ私はもう部屋に帰るから...」
と、よそよそしく帰ろうとする。
(?なんでだ?)
そのように疑問を覚えながらも、
帰って欲しくなかった俺はその手を咄嗟に掴んだ。
「!」
華が驚いた顔をして俺を見るも素直な言葉を言う。
「もう行っちゃうのか?」
多分自分でも分かるほど落ち込んだ顔をしていたと思う。
だが華は俺をきっと睨みつけて言った。