第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
そこで、俺はようやく気づく。
この子は、いつも本音で俺と接していてくれていたのだと。
俺がこの子の言葉を素直な言葉じゃないって決めつけていただけで。
華は本当にいつも俺の事を案じて、想ってくれていたのだ。
「っ...」
何だか温かいものが流れそうな気がしてふっと顔を下げる。
すると華が心配そうに俺を見た。
「い、家康どうしたの?大丈夫...?」
『私何か気に障ること言っちゃったかな...』
そう、この子から紡ぎだされる言葉は全て、本当で。
いつも素直で、明るくて、良い子って事を、いつから俺は忘れてしまっていたのだろう。
俺は少しだけ出た水滴を払って華に向き直る。
「...俺も、ごめん。俺は...あんたの事を、まだまだ知れていなかった。」
すると華はううん、と首を振る。
「家康はいつでも分かってくれてたよ。私の心も身体も家康のものだから。家康は、いつでも理解してくれてた。」
その言葉の後にふっと心の声が聞こえなくなる。
魔法の効力が消えたのだろう。
だけど、今はそんなこと、どうでも良かった。
今すぐに、目の前の子を抱きしめたくて。
俺はそっと手を伸ばした。
そしてぎゅっと華を抱きしめる。
そして素直な言葉を紡ぐ。
魔法になんて囚われない、俺の本音。
聞いてくれる?
「...あんたはいつもいつも俺のことを見てくれてたんだね。」
そっと耳元で言うと華がぴくりと跳ねる。
そんな仕草にも愛おしさを感じながら俺はさらに言葉を紡ぐ。
「俺はあんたに....ううん、あんたのことを信じきれてなかった。あんたが俺のことをそんなに大事に想ってくれてるって...分かってたはずなのに。」
「っ、家康それはっ...」
華が何か言おうとするがそれを防ぐように言葉をかぶせる。
「だから...今回のことでやっと、目が覚めた。あんたがどれだけ俺を想ってくれてるか、
俺がどれだけ...あんたを想ってるか。」