第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
華の心の中が見えるからと言って下手な動きは出来ない。
なぜなら俺は華と仲直りをしに来たのだから。
そこで俺は慎重に言葉を選ぶ。
「... 華。あんたに言いたいことがあって来た。」
それと同時に華の心の中の声も聞こえてくる。
『え...どうしよう、私に愛想尽かしちゃったのかな』
「....!」
その素直な言葉に少したじろぐも、聞こえていないふりをして話し続ける。
「俺と、あんたは喧嘩、してたでしょ?」
「うん。」
華が真剣な顔で聞き入る。
もしかしたら今が素直に言葉を紡ぐべきなのではないか。
俺は咄嗟にそう思う。
きっと華は自分の心の中が知られていると知ったら驚いて俺に失望するだろう。
でも、それでも今は華の素直な声が聞こえてくるのだ。
それなら、俺も今素直になるべきだろう。
俺がそう考えている間にも華の心の声が聞こえてくる。
『どうしたんだろう、ほんとに愛想尽かしちゃったの...?』
『やだ、嫌いになられたのかな...』
『お願い、早く喋って家康...』
そんな心の声が聞こえた俺は慌てて言葉にした。
今こそは、素直に言葉を紡ぐと決めて。
「俺は、あんたにすごく辛い想いをさせたと思う。あんたは俺しか見ないって分かってたのに...あんたを突き放した。」
俺が苦虫を噛み潰すように言うと。
『ううん、そんなことないよ』
それに応えるように優しい言葉が帰ってくる。
「っ...だから、あんたに、謝りたくて、来た。」
その言葉を聞いた華ははっと顔を上げて、
「私のほうが、謝りたいの!」
『私のほうが、謝りたい!!』
心と現実の声、両方同時に聞こえてくる。
だけどその声は全くおんなじもので。
「私だって、家康に迷惑かけて...本当に申し訳ないと思ってる。」
『家康に迷惑かけてほんとに、ごめんなさい...』
「だから、家康がぜんぶ悪いってわけじゃないの!むしろ私のほうが、悪いっていうか...」
『家康ばっかり責任を感じないで欲しい...』
華から紡がれる言葉と心の中の言葉は、ほとんど一緒だった。