第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
俺がそう言い終わると。
華は花のような笑みを浮かべた。
「...うん、私、家康のこと大好きだからね。」
「っ...」
その言葉に少し顔が赤くなるのが分かる。
だけど華には敵わないことはもう知っていた。
だから大人しく諦めてもう一度華の耳元で囁いた。
「...俺も、大好き。」
その言葉を聞いた華はまたはにかんで顔を赤く染めた。
その姿さえも愛しいなって。
想いを確認した日だった。
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あれから1ヶ月くらい経ち。
俺達は前の様に仲良く日々を過ごしていた。
あの魔法術書は....何故か、消えていた。
俺が部屋にそっと隠すように置いておいたのだが、いつの間にか消えてしまっていた。
どうせ三成あたりが勝手に取りに来たのだろう。
どちらにせよ、俺にはもうあれは必要ない。
なぜなら...
「家康!」
そう呼ぶ、あの子の大切さが、もっと大きくなったから。
これからは魔法なんてものに頼らない。
(...だけど、)
俺はふと疑問に思う。
三成はどうしてあの本を俺に貸したのだろうか。
本当に俺に必要だと思ったからだろうか。
そう思っていると、向こうから華の声が聞こえた。
「!」
俺はその声が聞こえた途端、そのことは忘れてその人の方へと歩き出した。
その影で。
一人の男が魔法術書を抱えて立っていた。
そして一言呟く。
「...失敗、ですね。」
そう呟いた男はその本の裏表紙をそっとめくった。
そこには、
『この魔法術は一種の毒薬です。一回目は良いですが、二回目以上この魔法をかけると、かけられた方の人がかけた方の存在を忘れます。』
と、小さく書かれていた。
その注意書きを読んだ男は呟く。
「...今度は二回かけてもらわなければ。家康様。」
そう鋭く目を細めるが....
「...あれ、三成くん?」
その声に三成と呼ばれた男は振り返り、笑顔で答えた。
「はい、何でしょう、華様。」
...後ろ手には、魔法術書を持って。
終。