第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
俺がそう思ったとき、一つの本が目に入った。
それと同時に三成の声が頭の中で再生される。
『華様の心の中、丸見えにしてみたくないですか?』
(っ...したい。)
自然とそんな言葉が浮かんできてしまう自分に驚く。
(何考えてるんだよ、そんなのしちゃ駄目だろ.....)
自分で自分を自制しようとするものの、やはりその本が目に入ってしまう。
そんな自分の欲望に耐えきれなくなった俺はそっとその本を手に取った。
「恋の魔法術書....」
まんまだな、と思いつつそっと表紙をめくると。
『この本を開いた殿下殿。きっと今愛する者の事で悩んでいるのでしょう。この書物は貴方の願いをきっと叶えます。』
と、書かれていた。
(ふーん、ちゃらけた文章じゃないんだ。)
思っていたよりしっかりしている前書きに少しだけ期待してしまう。
そして俺は恐る恐るページをめくってどれを華にかけるかを決めていった。
もう既に、魔法に完全に囚われていることを知らずに。
「...あ、これか。」
ページをめくっていくと様々な魔法とそれのかけ方を見つけた。
中には、愛する者の心を自分のものにする方法、等の不気味なものもあったけど。
そして一つの魔法に辿り着く。
それは、『愛する者の感情を読む方法。』というものだ。
「...これで、華の心の中が...」
そう言った途端、自分の完全なる欲望として華の心の中を見たい、というものが出来上がったのを悟った。
(ここまできたら...)
もう、引き返せない。
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華を愛してる。
華も俺を愛してる。
それだけで、良かった筈なのに。
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俺は早速魔法のかけ方をその本から習って、華の部屋の前まで来ていた。
「ねぇ、華、いる?」
そっと襖の奥に声をかける。
すると。
「え....家康?」
中から小さな声が聞こえた。
その華の様子に嫌な予感を感じる。
もしかして、泣いていたのではないかと。
そして俺は襖をそっと開けた。