第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
(くそ、あいつまた面倒くさいこと押し付けたな...!!)
心の中で三成の愚痴を叫ぶ。
何が魔法術書だ。
そもそも魔法なんて俺はさらさら信じていないし、そんなものがなくても努力と実力があればなんでも出来る、という考えの持ち主だ。
これまでも努力をして身につけた実力で弱い者から強い者へと成長するために頑張ってきた。
(....今では、華がいるから武力だけじゃない強さっていうのも学んだけど。)
そうして華に散々守られてきた。
俺が今ここにいるのは華のおかげでもある。
そんな人に魔法なんて。しかも華と喧嘩してるのに。
もっと使いたくない。
華とは、ありのままの自分とありのままの華という関係でいたいのに。
(...でも。)
俺はちらりとその本を見た。
そして少しだけ考える。
(...これで、華の心の中が丸見えになるのか?)
そう思った途端、心臓がドキドキと高鳴りだす。
思わず生唾も飲み込んでしまった。
だけど一度その本から目を離してもう一度深く考える。
なかなか普段聞けない華の本音。
度々喧嘩をすることもあったが、それはやはり華が俺を許してくれるという形が多かったわけで。
華の心の中を曝け出してくれることなんて多くはなかった。
(.......)
俺はもう一度あの本に視線を戻す。
(もしこれで華の心の中が見えたとしたら...
それはそれでいいんじゃないか?)
なんて、魔法なんて信じない考えがゆらゆらと揺れていることに気づかぬまま、俺はその一夜を独りで明かした。
「ふあ.....」
翌朝。独りで起きた俺は大きくあくびをする。
そして隣を無意識に触った。
(...そうか、華は居ないんだった。)
いつも朝起きたら華の頭を撫でるのが習慣だったため、無意識に触ってしまったのだ。
(...淋しい。)
(っ、どうしたら仲直りできる?)
本当に心の底から仲直りしたいと思っている。
だけど、その言葉を口に出すとなると難しい。
(どうすれば...)