第28章 恋の魔法より貴方の愛を。❥徳川家康
「家康様にこれをおすすめしたいなと思いまして!」
さっきの真面目な顔はどこへやら、三成は一気に気持ちの悪い笑顔に変わって俺に何かを差し出した。
(...なんだこれ。)
たが、それを見て最初に思った言葉はなんだこれ、だった。
三成から差し出されたのは、古臭くてしかも分厚い、本みたいなものだった。
しかも表紙にはホコリも被っている。
(うわ..面倒くさ。)
にこにこしてそれを差し出す三成にはぁ、とため息をつく。
そして一向にこの本みたいなものが何かを話そうとしない三成に聞いた。
「...これ何。」
すると三成はもっと目をキラキラさせて、
「おお、やはり家康様は興味がお有りなのですね!さすが私の尊敬する方です!」
と言って一人で頷いている。
それに寒気を感じながらも更に三成に聞いた。
「だから、これ何。」
「はい、これはですね...」
俺の質問に答えようとした三成が急に小さい声になって俺のそばに来た。
「...恋の魔法術書、です。」
「...恋の魔法術書?」
俺はその言葉の意味が分からなくて反芻する。
「はい、魔法術書。です。これは今家康様に必要なものかな、と思いまして。」
「は?魔法術書が?」
何だか見るからに危険そうな匂いのする魔法術書とやらがどうして俺が必要としているのだろうか。
すると三成は更に俺の側による。
そして小さい声で囁いた。
「... 華様と、喧嘩中なのでしょう?」
「...!お前...」
何でそれを、と言う前に三成が口を開く。
「華様からお聞きしました。そして、話をよくよく聞いてみると、やはり家康様にはこれが必要かな、と。」
「...どういうこと。」
俺がそう聞くよりも早く三成が口を開いた。
「華様の心の中、丸見えにしてみたくないですか?」
「...は?」
(っ、くそ。成り行きで貰ってしまった...)
俺は自室でその本とにらめっこをしていた。
あれから三成は急にその本を押し付けたかと思うと、いきなり走って逃げ出したのだ。
そしてその本をそこに放置するわけにも行かず、俺が持って帰ってきた、という訳だった。