第27章 消えない想いは永遠に。❥明智光秀
「お取り込みのところ失礼します」
「!」
私のよく知っている声が響き渡った。
その人の登場に周りの人も驚いた。
「さ、佐助くん...」
目の前にいつものポーカーフェイスを浮かべた佐助くんがいたのだ。
「皆様、失礼します。華さんに言いたいことがあってきました。」
佐助くんはそう言うと私の前に向き直る。
すると、
「...帰ってきたんだね。」
と、一言私に声をかけた。
心なしか少しだけ口角も上がっている気がする。
「っ、うん、ありがとう。...どうしたの?」
その佐助くんの言葉に感動しながらも私は用件を聞くべく口を開く。
すると、佐助くんは後ろの光秀さんにも声をかけた。
「...光秀さん、貴方にも聞いてもらいたい事です。」
すると光秀さんは佐助くんを少し見つめてひとつ頷いた。
「...承知した。」
そして、佐助くんが語り始める。
「...で、なんなの?」
「伸ばしたくないから単刀直入に言うと...夏香さんはもう皆さんの記憶にない。」
「え。」
その言葉に体が固まる。
光秀さんも驚いた顔をしていた。
その私達の様子に少し気を遣いながらも佐助くんは話を続ける。
「前にも華さんに言っていたと思うけど...君が帰ったら光秀さんが記憶を取り戻す、と言ったよね?」
「う、うん。」
「俺が思うに、その事の逆が起こったんだと思う。」
「逆?」
つい聞き返してしまう。
「うん、逆。つまり光秀さんが記憶を思い出したことで、君の存在が確かになって、夏香さんが居なくなってしまった、ってこと。」
「っえ...、それって夏香さんは...」
「いや、君の心配しているような事は起こっていないと思う。むしろ、夏香さんがもともと居るべき場所に自動的に返還されたんじゃないかなって俺は踏んでる。」
「あ、そうなんだ...それじゃ夏香さんは無事なんだよね?」
「あぁ、九割型、そうだろう。」
「わあ、良かった...っ」
私はほっとして大きく息をこぼす。
そしてその瞬間、夏香さんが無事で、楽しい人生を送ってほしいと、心から思った。
根はいい子と知っているからこそ、思えたことだ。