第27章 消えない想いは永遠に。❥明智光秀
光秀さんが私の代わりになるように尻もちをついていた。
「っ...ど、して」
私の口からは曖昧な言葉しか出てこない。
(これって、夢...?)
光秀さんが目の前にいることがどうしても信じ難くて私は目をこする。
それでも光秀さんは消えはせずにそのまま私を見つめていて...
「あ...あ...」
(どうしてここにいるの?どうしてここの場所が分かったの?夏香さんはどうなったの?)
頭の中ではたくさんの言葉が並べられている。
だけど何か言葉を発しようとするものの、その言葉は全て胸につかえて出てこない。
(どうしよう、何も、言葉が出ない。)
そんな私を光秀さんはじっと見つめて、
「...逢いたかった。」
と、一言呟いた。
(....っ、私、も。)
まるで透けてみえるような光秀さんの瞳。
そして向けられる暖かい目線。
その熱い眼差しに頭がくらくらする。
光秀さんが私をしっかり見据えてくれたこと。
それに引っ込んでいた涙がまた溢れかけた。
(っ、言葉をっ...出さないと、)
「みつひで、さん。お、もいだして...」
私は何とか言葉を紡ごうとする。
だけどやはり断片的な言葉しか出てこない。
(私の馬鹿っ...)
だけど光秀さんはそんな私をふわっと抱きしめた。
「っ...!」
久しぶりの光秀さんの体温に体中の血液が沸騰しそうになる。
それとともにこれまでの私を忘れてしまった光秀さんがフラッシュバックのように蘇ってきた。
『...お前は誰だ。』
凍てつくような鋭い目線。
『華と言ったな...何故あの時俺の部屋に居た。』
私を怪しい人としてしか見ていない顔。
『お前か夏香に何かしたら...俺は何をするか分からないがな。』
愛しい人を守るための厳しい姿勢。
『...俺の気持ちは夏香にしか向かないけどな。』
私なんて眼中に入っていない声。
全てが...私を惑わしてきた。
だけど、今私を見つめる光秀さんは.....違った。
冷たい目線で虐げられることもなく。
私を怪しむなんてこともなく。
厳しい声で牽制することもない。