第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
そんな私の様子を見て、佐助くんが少しだけ顔を歪めた。
「...ほんとに、いいの?」
その一言は、すごく重い。
でも、もう決めたことだから。
「...うん。いいよ。」
私は一言、そう返事をした。
佐助くんの馬に乗せてもらい、ワームホールが来るであろう場所に向かう。
それに揺られながらも、私は口を開いた。
「ねぇ、佐助くん。私が向こうに戻ってから、ワームホールが開く確率ってどれくらいなの?」
「うーん、0.3%くらいだと思う。もうほぼほぼ開かないよ。」
佐助くんは少し考えてから答える。
「...そっか、」
(じゃあ、もうほんとにお別れなんだな。)
頭に浮かぶのは信長様や、政宗、家康。それに三成くんや秀吉さん。
そして...
(...光秀さん。)
私は心の中で光秀さんへの思いを述べた。
(光秀さん、貴方には、最後の言葉が伝えられなかったけど...大好きだよ。これからも、現代に戻ったとしても、光秀さんだけを、愛してる。)
言えない想いはもう全部胸へとしまった。
すると、急に馬が止まる。
「!」
そして、佐助くんから声がかかった。
「... 華さん。ここで待ってたら、ワームホールは確実に来る。」
「...分かった。」
その言葉を聞いた私はそっと馬から草むらに降りる。
それと同時に、大粒の雨が降ってきた。
それはすぐに強いものへと変わり、豪雨の音しか聞こえなくなる。
そして、佐助くんが私に向かって叫んだ。
「華さん!俺は巻き込まれるからもう行くけど...どうか...幸せになって、!!」
その言葉ははっきりと私の耳に届いた。
「うんっ!ありがとうっ...!!」
私はそれに返事をする。
すると、馬の気配が遠ざかっていくのを感じた。
遠くで、雷の音がする。
あぁ、もう近づいてきていると、そう思った時だった。
「華っ...!!!!!」
どこかで、私の名前を呼ぶ、愛しい人の声が聞こえた。
(ふふっ、光秀さんの事が好きすぎて幻聴が聞こえたのかなっ...?)
そうは思うものの、久しぶりに聞く私の名前を呼ぶ愛しい人の声に、涙がぼろぼろとこぼれていく。