第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
「み、つひで、さん...」
私が名前を呼ぶが、光秀さんは反応せずに私を見つめる。
(光秀さん...?)
光秀さんは手を離そうとせず、そのままの姿勢だった。
すると。
「...華」
「っ、はい。」
光秀さんはふいに私の名前を呼んだ。
そして、部屋に甘い雰囲気が漂う。
その時だった。
「んーーっ」
「「!!」」
部屋にひとりの声が響く。
それと同時に光秀さんも私もぱっと引いた。
起きたと思われる夏香さんが何回か瞬きをする。
そして開口一番、
「あ...本当に居てくれたんですね...!ありがとうございます」
私達に感謝を述べた。
「あ...ううん、全然長い時間じゃなかったから大丈夫!」
私は慌ててそれに返事をした。
そしてちらっと光秀さんを見ると...
「!」
夏香さんを見つめていた。
さっき私には見せなかったような、愛しそうな顔で。
「っ...」
やっぱりこれが現実だ。
いたたまれなくなった私はそこですっと立ち上がる。
「夏香さんが起きたならもう大丈夫だよね!夏香さんお大事にね!」
言いたいことを早口で言うとさっと部屋を出た。
後ろに、誰かの視線を感じた気がしたけど...私はそれも振り切って廊下を駆け抜けた。
そんな話が、もう一週間前。
私は、武将たちにさよならを言いに行くべく、皆の部屋を訪ねていた。
最初は信長様。
「信長様...なんだか急に言いたくなったんですけど、その、今まで私を安土城に置いてくれて、ありがとうございました」
もちろん、皆には現代に帰るとは一言も言っていない。
信長様は私の顔を見ると、一瞬怪訝な顔を浮かべたが、
「あぁ。これからも幸福を俺に運び続けろ。」
と、にやりと笑っていった。
「っ、はい。」
(ごめんなさい、それ、守れない...)
そんな複雑な気持ちになりながらも、私はそっと天守を出ていった。
華が出ていった天守では。
「あやつ...ろくなことを考えているのではあるまいな。」
と、ひとり信長が呟いていた。
次は政宗のところへと向かった。
部屋へ通されると、