第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
「っ...」
その言葉に私が体を硬直させると、
「...何でもない、戯言だ。」
光秀さんがすぐに打ち消した。
しかし、私の心臓はこれでもかというほど鳴っている。
(光秀さん、思い出してくれたの...?いやでも佐助くんがここにいる間は思い出す事はないって...)
さっきの言葉の意味をぐるぐると考え続けるものの、答えは出ない。
しかも。
「「....」」
(き、気まずい...!)
夏香さんが眠ってしまった今、光秀さんと私はさっき以来黙り込んでしまっている。
(でも、光秀さんと話す最後のチャンスかもしれないし...)
どうせ1週間後にはいなくなるのだ。
今なら、何を話しても夏香さんからバチは当たらないだろう。
「...あの、光秀さん。」
そう決めて私は様子を見ながら光秀さんに声をかける。
それと同時に光秀さんの瞳が私を捉えた。
「...なんだ。」
前よりかはいくらかか優しくなった声に私は気になっていたことを聞いた。
「あの...光秀さんと夏香さんって、その、いつから恋仲なんですか...?」
私が聞くと光秀さんは少しだけ眉を寄せた。
「...何故そんなことを聞く。」
「あ...いえ、そんな深い意味は、無かったんですけど...」
語尾になるにつれて声量が小さくなっていく。
また光秀さんの怒りに触れてしまったのだろうか。
しかし、
「半月ほど前だ。」
その言葉にはっとして私は顔を上げた。
するとその一言だけ言って私を見つめている光秀さん。
「あ...そうなんですね」
私はかろうじて返事をするものの、心の中はかなり荒れていた。
(私と恋仲になったのも、半月前...。やっぱり光秀さんは本当に私という存在を忘れてしまってるんだ..というかすり替わって夏香さんが入ってきたって感じなのかな...)
光秀さんは今、光秀さんであって、私の知っている人ではないことが、しっかりと分かった。
いや、分かりたく、なかった。
私は無意識にぐっと膝の上に置かれた手を握りしめる。
「...何かあったか。」
「えっ...」
(しまった、光秀さんが目の前にいるのに、考え事してたなんて...!)
今度は違う意味で心の中が荒れる。