第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
「あぁ...それは、別に深い意味は無いです。」
「えっ!?」
夏香さんが言った台詞に驚く。
「え、深い意味はないの...?」
「はい。今は華さんにそばにいて欲しいなぁと思って。」
「え...」
(そ、そんな理由?)
夏香さんはにこっと笑うと瞳をうつらうつらとさせていく。
あ、眠たいんだな、と思ったその時だった。
「夏香!!!」
ばんっっ!
「!?」
そんな大きい声が聞こえたと同時に襖がいきなり開かれる。
それと同時に振り返った私ははっと息を呑む。
その現れた人物に夏香さんはふっと笑いかけた。
「もう〜、光秀さん、そんな心配しなくても大丈夫ですよ?」
(光秀さん...)
はぁはぁと息を切らしてきた光秀さんはずかずかと夏香さんの方へ来ると、ばっと額に手を当てる。
「針子から聞いてきた。おい、本当に酷い熱だぞ、大丈夫か?」
まるで私なんか見えていないように話しかける光秀さん。
その様子にまた私の胸はきつく締め付けられた。
「もう〜、大丈夫ですから。...でも、一つお願いがあるとしたら、華さんと一緒にそばにいてくれませんか?」
(え。)
「... 華。」
光秀さんはそこで初めて私の存在を見たようにゆっくりと私を見る。
「お願いします、安心する二人にそばにいてもらえると、もっと安心すると思うんです。」
ふわりと笑って言う夏香さん。
その言葉に光秀さんはふっと笑うと夏香さんの頭を一つ撫でて、
「あぁ。分かった。華と共にそばにいよう。」
その言葉を聞くと夏香さんはすごく安心したような顔になって、
「ありがとうございます、また、この恩は.....」
そう言いながらももう眠りについてしまった夏香さん。
(...熱で体が限界だったんだな。)
私はそっと夏香さんを見つめる。
すると。
「華。」
「!」
ふいに光秀さんに名前を呼ばれた。
私はその言葉にぱっと顔を上げる。
「....何ですか...?」
私がそっと聞くと、光秀さんは私の目を見つめて、
「俺は、お前に会ったことがあるか...?」
「!!!」