第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
早く、別のところに行きたくて。
現実逃避したかったのかもしれない。
でもとりあえず別の、さっきの光景を忘れられるような場所に行きたかった。
あと一週間しかないのに、こんな調子でいいのだろうか。
せめて、もう少しだけ、光秀さんと話したい...
そんな願いが思いもよらない形で叶うなんて、今は全く考えていなかった。
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「えっ!?夏香さんが!?」
私は自室で驚きの声を上げていた。
「はい、そうなんです...」
そう話すのは針子の子だ。
「とてもしんどそうで、見ていられなくて...部屋まで連れて帰ったんですけど、そこから私達のことを部屋に通さないんです。」
「え、なんで?」
「それが...分からなくて。でも華さんだけなら通すと言われたので、呼びに来たんです。」
「え、私...?」
「はい...とてもしんどそうなので、どうか行ってあげて下さい!」
針子の子が頭を下げる。
それに私は慌てて顔を上げさせるように言った。
「か、顔を上げて!行くから大丈夫だよ、安心して?」
私がそう言うとその子はほっとした顔でありがとうございます!とにっこり言った。
その子が出ていくと...
(私だけ通すなんて何があったんだろう...)
そう思いながらも腰をあげる。
そして夏香さんの所へ行くために私は襖を開けた。
「あの、夏香さん...?」
私は夏香さんの部屋の前まで来ていた。
そして襖越しにそっと声をかけた。
すると。
「はい...どうぞ。」
中から弱々しい声が聞こえて私は慌てて襖を開ける。
「夏香さん!?大丈夫!?」
そこにいた夏香さんは弱々しく呼吸をし、顔も真っ赤になっていた。
急いで駆け寄り、熱を確かめる。
「っ、熱っ...」
その様子にただならないものを感じた私は慌てて水と桶と布を持ってきて、夏香さんの額の上に置いた。
夏香さんは気持ちよさそうな顔をすると、ありがとうございます、と言って私をそっと見つめた。
いくらか辛くなさそうになった夏香さん。そこで私は気になっていたことを聞くことにした。
「あの、どうして私以外を通さないって言ったの...?」