第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
(ふふっ、光秀さんの顔、想像できるな...)
光秀さんがいつもは見せない自慢気な顔。
その顔だって私は大好きだった。
そう思っている間にも二人の会話は続けられる。
「それにしても光秀さん、最近悩みごとがあるんですか?」
(え、悩みごと、?)
「ん?何故そんなことを聞く。」
「いえ、最近光秀さんの顔が浮かない顔をしているので...何かあったかなと。」
(え、そうなの!?)
後ろでかわされる会話に思わず参加しそうになってしまう。
光秀さんに悩みごとが...?
私と過ごしている間は悩みごとも何も無かった気がする。
一体何なんだろう...と、私がそう思っていると、
「ほら、さっきからかなり後ろを気にしているし。後ろに何かあるんですか?」
(!?)
夏香さんの放った言葉に一瞬体が硬直する。
(え...まさか、バレてなんて、ないよね...?)
背中に冷や汗が伝う。
私はこれまで一回も振り返らなかったし、光秀さんに顔も見られていない。流石に光秀さんでも後ろ姿だけで私を判断するのは難しいんじゃないか...と考えていると、
「...いや、なんでもない。」
光秀さんが珍しくはぐらかした。
(え、どうしたんだろう)
その声に逆に心配になってしまう。
だが、光秀さんはそのまますっと立ち上がる気配を見せると、
「さぁ、もういいだろう。次の場所へ行こう。」
と、夏香さんを催促しているように見えた。
(あ...もう行っちゃうんだ...)
私は少しだけ落胆する。
(!まさか...)
でも、そこであることに気づいた。
今私が着ている着物。この着物は...
光秀さんからプレゼントされた反物で作った着物だった。
(嘘、光秀さん、これに反応したの....?)
それ以外にはもう考えられない。
光秀さんから貰った反物で作った着物。
それは光秀さんが私の事を忘れてからも愛用しているものだった。
(光秀さん...これに反応してくれたのっ...?)
あまりの嬉しさに胸がつまり、思わず胸を抑える。
二人が去っていたあとも...
私はその余韻に浸っていた。
でも、少し時間が経って、頭を冷静にする。