第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
これまで色んなことがあって、楽しいこともあれば辛いこともあった。でも、それを皆で乗り越えたり、たまに一人で乗り越えたり。
本当に充実した日々だった。
そして、その私の生活の真ん中に居たのは...光秀さんだった。
いつも見せる意地悪な顔もそう。
私をからかっては楽しそうに笑う、光秀さんの顔が、憎らしくも、大好きだった。
そして...
「華、愛してる。」
私に愛を囁く...あの声も。
全部全部大切な思い出だ。
もちろん針子の皆も含まれている。
ここの時代の人たちは皆良い人ばっかりだって、ここで知らされた。
...でも、ここまでだね。
「...帰るよ。」
私は一言に全てを込めて佐助くんに返した。
佐助くんも何かを受け取ったようで真っ直ぐな視線を私に向けていたが、分かった、と一つ呟くと、表情を柔らかくして、
「じゃあ、ワームホールが来るときになったら呼びに行くよ。部屋は変わってない?」
「うん、そのままだよ。」
「了解。じゃあ、また一週間後に。」
「うん、またね。」
佐助くんはそう言うやいなやぽんっと音を立てたかと思うと一瞬でいなくなってしまっていた。
「うわぁ、流石だな」
私がそう一言に呟いたとき...
「わあっ!こんな素敵なお店あったんですね!」
「!?」
どこかで聞いたことのある声に思わず体がすくむ。
そしてその後に更に聞き慣れた声が聞こえてきた。
「あぁ、ここの羊羹は俺でも美味いと思うものだからな。」
(あぁ...光秀さんだ...)
振り返らなくても分かるその声に思わず振り返たくなる。
そういえば城下に行くと行っていただろうか。
今すぐ振り返って顔を見たくなる衝動に駆られる。
だけど、わたしはそれをぐっと押しとどめた。
今ここで振り向いて二人が仲良くしているところを見て何になる?
私が、虚しくなるだけなのは見えている。
だから私は二人が出て行くまで待つことにした。
二人はとても楽しそうに話している。
「わぁ、ほんとに羊羹美味しい...」
夏香さんが声を上げると。
「あぁ、そうだろ?」
と、少し自慢気な光秀さんの声が聞こえる。