第25章 消えない想いはいつの日か。『後編』❥明智光秀
「思い、だす....。」
その単語が頭の中をぐるぐると回る。
それと同時に、光秀さんと私との思い出が走馬灯のように走った。
「...それは、私がこの時代に居ても思い出さないの?」
「...多分、思い出さない。思い出すというか、君の存在が今光秀さんの中にないから。」
「っ...」
私が現代に帰らないと、光秀さんは私の事を思い出さない...
どうしてこの世は上手く回らないんだろう。
私が居る間に思い出してくれる可能性はほぼ0。
もし。光秀さんが私を思い出してくれたなら。
なんて淡い期待を抱いても現実になることはない。
だからこそ、もうこの乱世には居たくないという気持ちが大きくなっていた。
でも。
「光秀さんが私を思い出したら...夏香さん...光秀さんの恋仲の人はどうなるの?」
私が佐助くんに聞くと、佐助くんはうーんと頭を悩ましてから、こう答えた。
「うーん、存在自体が無くなっているか...そのまま居て光秀さんのそばに居続けるか...どちらかだな。」
「え、存在が...?」
「あぁ、君の存在を皆が忘れているように、その人の存在が無くなるかもしれない。これはまだ仮説に過ぎないけどね。」
(それはそれで、何か、可哀想だな...)
光秀さんの恋仲とはいえ性格も良い子で、優しい子だ。
その子の存在が無くなってしまうのは...可哀想な気がする。
(...でも。)
「私が現代に帰らないと、私は、殺されるん、だよね?」
「!」
佐助くんは一瞬言葉に詰まるが、
「っ、あぁ。次のワームホールが来たときに帰らなかったら...殺される可能性が高い。史実に合わせようとする力によって。」
「そんなことって...ほんとにあるんだね。」
「で、次のワームホールはいつなの?」
「あぁ、それだけど...一週間後、だ。」
「え、一週間...?」
思ったより近いことに驚く。
「うん。この機会を逃したら、華さんはその、殺される可能性が高い。...もう現代に戻ることに決めたの?」
「...!」
佐助くんからそのことを聞いた途端、光秀さんとの思い出ももちろん、これまで過ごしてきた武将達の顔が思い浮かんだ。