第3章 二人の恋の交差点 ❥徳川家康
家康が黙々と作業をしていた頃...
華は夢の中だった。
(あれ、)
__家康さんの夢を見ていた、ような...
家康さんが私に向かって手を差し伸べている姿だ。
私は必死に手を伸ばそうとするけど、身体が重くて手が伸ばせない。
「家康さんっ...!」
その自分の発した言葉で私は飛び起きた。
「いきなり名前呼ばないでよ...びっくりする」
(!)
「いっ、家康さん!?」
夢で見ていた姿が目の前にあり、
私はプチパニックになった。
「な、なななんで家康さんがここに?」
「あんたが風邪引いたからでしょ?だからあれだけ気をつけなよって言ったのに...」
(あ、そうだ。私風邪引いてたんだ....)
そういって溜息をつく家康さんを私は申し訳ない気持ちで眺めていた。
「...ごめんなさい...」
いたたまれなくなり俯くと...
「っ、違う。顔上げて。」
「...え?」
(違うって何が...)
「俺はあんたにそういう顔して欲しかったわけじゃない」
(え?)
「あんたにはそういう顔は似合わないって言ってるの。」
「いつもみたいに笑ってなよ。」
「っ、でも私のせいで家康さんに迷惑かけ...」
「...いいよ。」
「え、」
「あんたになら迷惑かけられても、いい。むしろ...」
そこではっと家康さんが口を噤む。
家康さんが自分の口を抑えて下を向いた。
(え、それって...)
華はそこで淡い期待を抱いた。
もしかして、家康さんも...?
相変わらず家康さんは下を向いたままだ。
首筋は、真っ赤で。