第3章 二人の恋の交差点 ❥徳川家康
ちょうどその頃。
女中から華の事を聞いた家康は薬と桶などを持って
華の部屋を訪ねていた。
「華?入るよ??」
返事がない。
(寝てるのかな)
「いい?入るからね?」
そう念を押してから家康は襖を開けた。
そこにいたのは、すやすやと寝息を立てて
眠っている華の姿。
(っ、なんでこんなに無防備なんだよ...!)
今すぐ抱きしめたい衝動を抑え、家康は華のおでこに手を当てた。
(あつっ...)
相当酷いな。これ。
(とりあえず、桶と水の用意と、薬の用意もしとくか...)
そうして家康が華の看病をしていると...
「ん...」
と、華が唸り、うっすらと目を開けた。
(あ、まずい、起こしたか?)
そう思ったのも束の間、次の瞬間にはもうしっかりと目は閉じられていた。
(なんだ...。)
今自分はもしかしたら起きてくれるかも、と、願った。
はやく、華に会いたくて、その唇で家康さん、と囁いてほしくて。
(何考えてんだよ、俺は。)
仮にも今、華は患者だ。
患者は患者として、接しなければ。
そして、恋仲、でも、ないのだ。
触れたいけど、触れられない。
そんなもどかしい距離にむすむずした家康は、
(馬鹿馬鹿しい。さっさと手当してしまおう。)
今はそれだけを考えて、いや、自分に言い聞かせて作業をしていた。