第24章 消えない想いはいつまでも。『前編』❥明智光秀
「さぁ、もう帰れ。寒いんだろう?」
「!!」
そこまで見抜かれていたのか。
でもその言葉は、もう私は用無しだから帰れと言われているみたいで。
「分かりました...帰ります。」
(ちょっとだけ...前みたいに話せたと思ったのにな。)
そう思っているのは私だけなのだろうけど。
そんなことを思いながら私は台所から去っていった。
その頃。
「ふっ...なんだか初めて会ったような気のしない娘だ。」
光秀は誰もいなくなった台所で1人微笑んだ。
翌朝。
(よし、今日も気合い入れて頑張ろう!)
私は自室で大きく背伸びをしていた。
光秀さんに起きたら会えないのは辛いし、まだ慣れない。
けど、こうやってうじうじしていても何も変わらないって、光秀さんから教えてもらった。
もう一度大きく背伸びをすると、私は仕事をする針子部屋へと向かっていった。
「皆、おはよう!」
襖を開けて皆に声をかける。
「あ、華ちゃん!おはよう!」
「華さんおはよう御座います!」
「華ちゃん今日もよろしくね〜!」
あちこちから声が飛び交ってきた。
この様子は光秀さんと離れてからも一切変わっていない。
ただ一つ変わっていたのは...
「華ちゃん、おはよう!早速なんだけど、教えてほしいところがあって...」
そう言って来たのは、光秀さんの恋仲...の人。
「あ...うん!すぐ見るね!」
夏香というその子は明るくて笑顔もきらきらと輝いているとても良い子だ。
だけど、私はその子を知らない。
どうして私と光秀さんが恋仲ではなくなった途端この子が現れたのかは分からないが、良い子という事はすぐに分かった。
(...どうせならもっと嫌な子なら良かったのに。)
私は夏香さんに裁縫を教えてあげながらもそう思った。
____それなら、せめて精一杯憎めるのにな...
だけど目の前の子はすごく良い子だ。どこも憎む要素がない。
それが悔しかった。
「わぁ...出来たぁ!華ちゃんのおかげだよ!ありがとう!」
教えてあげたところが出来たらしく、夏香さんはすごくはしゃいでいる。
(こういう子だから、憎めないんだよなぁ...)