第24章 消えない想いはいつまでも。『前編』❥明智光秀
「光秀さん、どうして...?」
問いかけるがそれを答えてくれるものはどこにもいない。
「おい、華?どうした?」
「!」
秀吉さんの声でようやく我にかえる。
(そうだ、秀吉さんなら何かっ...)
「あの、秀吉さん!」
私は立ち上がって秀吉さんに詰め寄る。
「お、おう、どうした?」
いきなり立ち上がって詰め寄る私にたじろぎながらも秀吉さんはしっかり私に向き合う。
「...光秀さんの、恋仲の人って、誰?」
私は祈りながら聞いた。
どうか、華だと、私だと、言って...。
でも、その願いは、届かない。
「あぁ、夏香だろ?」
「!」
当たり前のように言われた言葉に頭がついていけていなかった。
「なんでそんなこと聞くんだ?」
秀吉さんが聞くが、なんでもない、と言って秀吉さんをはぐらかし、そこで秀吉さんと別れた。
廊下を歩きながら考える。
(やっぱり、光秀さんの恋仲の相手はあの夏香っていう女の人になってるんだ...)
突きつけられた事実と、あの鋭い光秀さんの目。
全てが私の頭をおかしくさせそうだった。
「な、んで?なんで、なの?どうして急に...」
私は突然はたと思いついた。
今の私の部屋はどうなっているのだろうか。
光秀さんの恋仲が夏香という人になっているのならば私の部屋の光秀さんのものはどうなっているのだろうか。
ふいに思い立って私は自分の部屋へと足を向ける。
「...!」
自分の部屋の前まで来て襖を開けると...
「...なくなってる。」
私の部屋はそのまま残っており、私のものもそのままだったが、光秀さんのものだけが忽然となくなってしまっている。
「ほんとに、どうなってるのっ...?」
光秀さんに、会いたい。
意地悪でもいい。何でもいいから、光秀さんにまた愛してるよって言ってほしい。
「っうっ...ううっ」
気づくと私は膝をついて嗚咽をあげていた。
目からは涙がぼろぼろと溢れ出ている。
「なんでっ、なんでっ...」
拭っても拭ってもその涙はこぼれ落ちる。
そりゃそうだ。
これまでこの涙を拭ってくれたのは...
光秀さんだから。