第24章 消えない想いはいつまでも。『前編』❥明智光秀
「んんー、みつひでさん...?」
その女の人が声を上げた。
「あぁ、すまない。起こしたな。」
そう言って光秀さんがそっとその人の頭を撫でる。
そしてその女の人に話しかけた。
「おい、夏香。この女知ってるか?」
(この女って...)
まるで他人のような呼び方をする光秀さんに気持ちが深く沈んでいく。
そのなつか、と呼ばれた女の人が私のことをじっと見つめると、
あ、という顔をした。
そして
「この方、私の針子の友達です!華ちゃんって言うんです!」
と、光秀さんに言った。
(...え?)
私はこの人と友達でもないし面識もない。どうして名前を知っているのだろうか。
「え...」
と私が声を上げるが、光秀さんは安心した顔をしてそういうことか、と呟いた。
そして私に向き直ると、
「で、華さん、何か用ですか。」
と、私に問いかけた。
(っ、用って...)
私はただ光秀さんの隣で寝ていただけだ。
なのに...
心の中がいろんな感情で渦巻いて、私は咄嗟に、光秀さんが傷つきそうなことを言ってしまうと思った。
そして気づいたら私は何でもないです!と叫んで部屋を飛び出していた。
廊下を走りながらも涙が止まらなくなる。
(どうして、どうして光秀さんは私の事が分からないの...っ?あの隣の女の人は誰なのっ...)
自分の身に何が起こっているのかが分からずにただ走る。
すると、
どんっ
「!?」
私の体は誰かにぶつかって止まった。
「っ、いたた...ご、ごめんなさ...」
額をさすりながら見上げると、そこには、
「おい、華。廊下を走るなよ、危ないだろ?」
いつも心配そうに私の面倒を見てくれる、秀吉さんの姿があった。
「ひ、でよしさん...」
ようやく見慣れた姿の人が現れて安心した私は体中の力が抜けたようにぺたんと座り込んでしまった。
「お、おい!どうしたんだ!?」
いきなり座り込んだ私を心配してくれる秀吉さん。
でも、今はそんなことは考えられない。
光秀さんが、私の存在を忘れてしまっている