第23章 純白花嫁は貴方の為に❥豊臣秀吉
そのまま二人でどれくらい見つめ合っただろうか。
二人とも何故か体が固まったように動かなかった。
でも。
「...」
秀吉さんが静寂を破るように私の方へ手を伸ばした。
そして、頬に手をかける。
拒む理由もない私はされるがままになっていた。
すると秀吉さんがそっと口を開いて、
「...なぁ、お前は...」
何かを言いかけたとき、
「華ちゃーん、居るー?」
「「!?」」
秀吉さんは反射的に私の頬から手を離し、私もぱっと声が聞こえた方へと向き直った。
「っ、は、はい!居ます!」
少し声が震えたが返事を返すと。
「この前の着物の件で少し相談したいことがあるんだけどいいかなー?」
襖の向こうから聞き慣れた声が聞こえる。
針子の子だろう。
「あ、い、今行く!」
私は反射的に声を返した。
「はーい、針子部屋で待ってるねー」
私の返事を聞いた針子の子は針子部屋へと戻っていった。
「「...」」
今度はさっきとは違う静寂が流れた。
(っ、なんか、気まずい...)
何も悪いことをしていないのに何か悪いことをしてしまったような気がする。
そして今度は私からおそるおそる声をかけた。
「っ、あ、あの、秀吉さん...」
私が声をかけると、秀吉さんは俯いていた顔を上げて笑顔を見せた。
「行ってこい。この話はまたあとでも良いから。」
にこっと笑って私に言う。
(っあ、怒らないんだ...)
話を邪魔されたのに怒らない秀吉さんはやっぱり心が広いと思う。
その笑顔に安堵を感じて私も同じように笑みを返した。
「うん...!行ってくるね!」
もちろん秀吉さんと一緒にいる時間がなくなったのは残念だが、さっきの着物の件は私がずっと大切にしてきた件だった。
それに...もうお見合いの話は聞きたくない。
ここで行かないのはきっと後悔すると思った判断だった。
私はもう一度秀吉さんに感謝を言うと、自分の部屋から出ていった。
だから私が出ていった部屋で。
「...俺が華の事を好きだって言ったら、どんな反応するだろうな。」
なんて秀吉さんが言っていたことは知らなかった。