第23章 純白花嫁は貴方の為に❥豊臣秀吉
「っあぁ、何でもない。」
秀吉さんはまた私の言葉を曖昧にかわした。
(何かあったら言ってくれればいいのに)
私は頼られていないということなのだろうか。
でも秀吉さんの悲しそうな目は見たくない。でもずかずかと私情に立ち入るのはどうだろうか。それは秀吉さんは嫌がるのではないだろうか。
うーん、と私が頭を悩ましていると、秀吉さんがそっと口を開いた。
「...お前は、見合い、したいか?」
「...え?」
何かを思い詰めたような顔で、でも私をしっかりと見据える秀吉さん。
(秀吉さん今日一体どうしたの...?)
悲しそうな目をする時が多すぎる。
それに。
(お見合いなんて、嫌に決まってるよ...!)
秀吉さん以外は好きになれない自信がある。
それほど秀吉さんにハマっているのだとついこの前自覚したばかりだというのに、誰かお見合いを喜ぶのだろう。
(...でも。)
秀吉さんは私に幸せになってほしいと。
心から思っている。
一月ほど前、妹みたいなお前が幸せなら俺も幸せだ、と。真っ直ぐな笑顔で言われ、返す言葉がなくなりうん、と返したばかりだ。
ならば。
「...私は、幸せになりたい。」
「!!」
秀吉さんが目を見開く。
でも、それは本音だった。
幸せになりたいと思っているのは事実だ。
あわよくば、秀吉さんの隣で。
...なんてね。
と、皮肉めいた事を心の中で思ったとき。
「...そうか。」
秀吉さんが何かを諦めた声色で呟いた。
そして、私の腕をそっと引き寄せると。
「...幸せになれよ。」
と耳元で呟いた。
「っ...!」
その言葉に胸がどくんっと高鳴る。
でも、秀吉さんの声色からその言葉には重い意味が込められている気がして、思わず秀吉さんの目を見つめ返した。
「秀吉さん...」
私がそっと秀吉さんの名前を呼ぶ。
すると。
「っ...」
秀吉さんの頬が淡く色づき、目線を私から外した。
(え、)
その初めて見る反応に僅かに動揺する。
なんで、顔を赤く染めるの...?
どうして目を逸らすの...?
そこには、妹ではない特別な意味を感じて。
少しだけ、身震いした。