第22章 トキメキが止まらない?❥織田信長
その真面目な声に私は自然と背筋が伸びる。
「な、何でしょうか...?」
すると信長様はそっと私を抱きしめる手を離して、
「これから、貴様に会える時間が少なくなる。」
と、単刀直入に言われた。
「え...」
信長様がその理由を語っていく。
「今俺は一番忙しい時期にある。」
確かに信長様は忙しい日々が続いていた。
「それは貴様も知っているだろう?」
「っはい...」
なかなか会えなくて寂しい思いをしているのも事実だった。
しかし信長様によると、これからもっともっと忙しくなるらしい。
「今の時期は安土にとって最も大事な時期だ。その時期はやはり政務が多くなる。」
この時期は商業が最も発展する時期らしい。それに信長様が出向く、というのは例年通りのことらしい。
「去年までは大切にするべき者などいなかったから、いつでも飛び回れたんだが...」
そこまで言うと信長様は私の頭をそっと撫でる。
「今年は貴様がいるからな。放っておくわけにはいかない。」
そう言って優しい目で私を見つめた。
「っ、信長様...」
私はその言葉に感動したが、信長様はこれを伝えるためだけに時間を割いてくれたのだろうか。
信長様は言葉を続けた。
「これから貴様に寂しい思いをさせるかもしれん。だが、耐えてくれないか。時期が終わったらいくらでも貴様を甘やかしてやる。」
そう言ってにやりと笑って私を見た。
「っ、...」
甘やかすという言葉にまた顔が赤くなるのが分かった。
「っ、信長さ...」
私がそう言おうとした時、
「...信長様。」
襖の向こうから一つの声が聞こえた。
「...なんだ。」
信長様がその声に応える。
「...恐れながら申し上げますが...もうお時間かと。」
(この声、秀吉さん?)
秀吉さんが信長様に向かって話しかけていた。
信長様は秀吉さんの声を聞くと、すっと立ち上がった。
「すまん、俺はもう行かなければならないらしい。貴様を側におけないことを謝る。」
そう言って信長様は申し訳なさそうに眉を寄せた。
「っ、私は大丈夫ですので、行ってください。」
そんな信長様の顔を見たくなくて私はすぐに答えた。
信長様は私の答えに満足したのか、一つ私に頷くと、体を翻して秀吉さんの声が聞こえた方へと歩いていった。