第21章 純白華蜜烈火理論❥徳川家康
(っ、でも。)
言わなければ、何も変わらないと。
それも私は分かっていた。
険しい顔をする私を家康が覗き込む。
「ねぇ、言って。なにがあったの。」
本気で私を心配してくれているその姿に私は心の内を打ち明けると決めた。
「家康は...」
そっと話し始めた私に家康が頷く。
「うん。」
「女の人と、祝言を挙げたんだよね」
言っているうちに涙が溢れそうになるが、こらえて続けた。
ふと前を見ると、
家康が本当に驚いた、という顔で私を見ていた。
その顔が、まるでそうだよと。肯定しているかのように見えて私はぐっと拳を握りしめた。
「兵士の人が言ってたの、家康が若い女の人と一緒にいて、その女の人が祝言を挙げれて嬉しいですって、言ってたって...」
家康の顔を見れない。一体今どんな顔をしているのか。
私は下を向いて、ぎゅっと目を瞑った。
すると、上から家康の声が聞こえた。
「っ、ごめん。」
(え...?)
...何の、ごめんなの?
祝言を挙げてごめんってこと?
私以外を愛してごめんってこと?
(っ、やだな。)
自分が嫌な方向へ向かっているのが分かる。
でも、止められない。
「...なんで、謝るの?」
その言葉に家康ははっとしたように私を見る。
その真っ直ぐ見つめてくる瞳に。吐き出すようにして全てを伝えた。
「家康は、私以外と祝言を挙げたことに謝ってるの?」
「っちがっ...!」
家康が何か言おうとしているが、もう止まれない。
「家康は、見合いって嘘をついても、その女の人と祝言を挙げたかったのっ...?」
涙がぽろぽろと溢れる。
それでもまだ私の口は喋りだす。
「家康はっ、本当は私のことなんて、愛してな....」
「っ、止めろ!!」
「!!」
その家康の声で私はようやく目が覚めた。
家康の瞳は悲しい色を宿している。
「俺は、あんたしか愛してない...!」
心から叫ぶような家康の言葉に少し揺り動かされたが、私の心はまだ納得していない。
「っ、じゃあなんでっ...」
そう聞く私に伝えられた内容は、家康が私のことを想ってくれていると。ありありと分かる内容だった。