• テキストサイズ

『イケメン戦国』永遠に紡ぐ恋ノウタ

第21章 純白華蜜烈火理論❥徳川家康




(ねえ、嘘だよね...)


針子の仕事が終わって部屋に戻ってからも私の頭の中は祝言という言葉でいっぱいだった。


針子の皆は、何度も私を慰めてくれたが、私はその気持ちにろくな返事も出来ずに戻ってきてしまったのだ。


(今何時...?)

もうあたりは暗くなってきている。家康はいったい何をしているのだろうか。

(はやく、帰ってきて、家康っ...)

そう思っているうちに私は暗い微睡みの中へと堕ちていった。























(...あれ。)


ふっと目が覚めると、私は柔らかな褥で寝かせられていた。

まだ外は暗い。

(なんで、私...)


誰がここまで連れてきてくれたのだろうか。

そんなことを思っていると、


「あ、起きた」


(!!)


愛しい人の声が聞こえた。



慌てて声が聞こえた方向へ振り返ると、愛しい人がわたしの方へと歩んできている。



「い、えやす...」

私は家康にかける言葉が見つからずそっと家康の名を呼ぶ。

すると家康はそっと私の頭を撫でた。


「遅くなってごめん、色々手間取ったんだ。」


(っ、)


色々って、何?若い女の人と祝言を挙げること?

なんて捻くれた考えが出てしまう。


(あ、まずい)

このままだと涙が溢れてきてしまいそうだ。

私はそれをぐっと唇を噛んで耐えた。

すると...


「...ねぇ、なんかあった。」


家康が不意に私に話しかけてきた。

私はその言葉に何も答えずに下を向く。

今、口を開いたら思ってもみないようなことを言ってしまいそうで怖かった。


そんな私を見た家康が私の顎をそっと掴んで自分の方へと向かせた。



「ねえ、俺の目、見て。」


その瞳が、あまりにも優しいから、



ぽろっと大粒の涙がひとつ、溢れた。




「!」

家康が驚いた顔をする。

そして私を真っ直ぐ見つめた。



「ねぇ、何があったの?」



その目には心配という文字が浮かんでいる。


「っ、あのね、」


私はそこで一旦口を止めた。


今この事を言ったところで解決するだろうか。

祝言を挙げたことに変わりはないのだから、何を言っても無駄じゃないのか。

決してそんなことはないって分かっていたのだけれど。


今の私はそれしか頭を占めていなかった。


/ 487ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp