第21章 純白華蜜烈火理論❥徳川家康
翌日。
私は仮のお見合いをしに行く家康をお見送りに来ていた。
「じゃ、行ってくるから。今日は絶対外に出たら駄目だからね。」
「うん...」
また釘を刺される。
私が下を向いているのを見て、家康はそっと私を抱きしめた。
「...あんたが思ってるような事はほんとに無いから。心配しないで。」
「...うん、そうだよね。」
私は自分に確認するように呟いた。
そして家康は私の体を離す。
「今日中には帰ってくるから、待ってて。」
「うん、分かった。」
いくらか不安が消えた私は素直に頷く。
「じゃあ、行ってくる。」
そう言うと家康は御殿から出ていった。
その背中を見送りながら思う。
(家康は何もないって言ってたもん。それを信じれば、良いよね。)
今の心の綱は家康の言葉だけだ。
(さ、仕事しなくちゃ。)
いつまでもこうしていても仕方ない。
私は頭を切り替えて自分の仕事へと戻った。
私が黙々と針子の作業をしていると...
「た、大変だぁ!!!」
そんな声が聞こえたかと思うと針子の部屋へと一人の兵士が転がり込んできた。
「!?」
みんな何事かと一斉にそちらを見る。
その兵士は私を捉えると、半ば叫ぶように言った。
「家康様が、祝言を挙げるらしいっ...!!」
(---え?)
瞬間。
私は頭をハンマーでごんっと殴られた気がした。
「え、それってどういうこと!?」
「どこの情報なの!?」
針子のみんなが口々にその兵士に聞く。
その兵士によると、
さっき、警備の為に城下を歩いていたところ、家康を見つけたため話しかけようとすると、家康の隣に若い女の人が居たと言う。
「それでっ、その女の言葉全ては聞き取れなかったが、祝言を挙げられて光栄ですって、言ってたんだよ...!!」
私はその兵士の言葉を聞いても頭が回らなかった。
信じたくない。
信じたくない。
信じたくない。
(信じたくないよっ...!!)
ぐるぐると余計な考えが頭を回る。
(家康は、祝言を挙げることに私に後ろめたさがあったから昨日あんなに様子がおかしかったの?)
それさえも信じたくない。
でも、そうすると全ての辻褄が合った。