第21章 純白華蜜烈火理論❥徳川家康
(...家康、遅いな)
家康が光秀さんと話に行ってかなりの時間が立っていた。
(どうしたんだろう)
何か嫌な予感がして御殿の前まででてくると...
(!家康...?)
もう家康は御殿の前まで来ていた。
でも、なにか考え込むような顔をしてそこに突っ立っている。
(なんでここで...)
その顔があまりにも苦しそうだったから...
私はそっと声をかけた。
「家康...?」
私のその声にはっと顔を上げた家康が私をじっと見る。
「家康?どうしたの?」
何も言わない家康に不安になって近づく。
すると。
ぎゅうっ
「!?」
いきなり家康に強く抱きしめられた。
「いっ、家康!?どうしたの!?」
その声は届いているのかいないのか、家康はその腕を弱めようとしない。
「ねぇ、家康...どうしたの?」
いつもと違う家康にただならない空気を感じて私はそっと家康に聞く。
すると家康が私と向き合う。
私をじっと見つめると...
「ねぇ、華。もし俺が...」
そこまで言うと家康はまた顔を歪めた。
「...うん。どうしたの?」
私は家康に続きを話すようにそっと促したが、家康は自分で心を決めたように首を振る。
「..ううん。何でもない。」
弱々しく笑って家康は私の体を離すと、
「ほら、体冷えるから入るよ。」
そう言って御殿の中に入っていった。
その後、私は家康に明日は1日御殿を出ないようにと釘を差された。
「え、なんで?」
私はそう聞くが、
「明日の夜、あんたに全部話すから。お願い、今だけは言う事聞いて。」
「っ、分かった...」
その真面目な瞳に何も言えなくなり、頷く。
すると家康はほっとした顔になってぽんっと私の頭を一つ撫でると、先に褥に入ってるから、と行ってしまった。
(ほんとに家康、どうしたんだろう...)
いつもとは明らかに違う家康の様子。
(絶対、なにかあったよね。)
何もないのにあんな態度をするわけがない。
(あぁ見えてかなり顔に出るからなぁ)
その家康の様子に何故か嫌な予感がした。