第20章 桜記念日『後編』❥真田幸村
でも。一年もあいつに会えていないとなると、さすがに俺も精神がまいりかけていた。
あいつの笑った顔が見たい。
そう考える頻度は日に日に増していき。
とうとう最近は毎日考えるようになった。
でも、もうすぐで全てのことが片付く。
そうしたら、あいつを一番に迎えに行こう。
どんな顔をするだろうか。
笑うだろうか?
いや、あいつのことだから泣き笑いなんてしそうだな、
なんて考えている時間さえも愛おしかった。
そして。ついに。
(終わったぁ...!!)
俺は、最後の書簡を家来に渡し。
ごろんと横になった
(やっと、あいつに、会える。)
その実感がふつふつと湧いてきた。
(早く迎えに行かないとな。)
本当は今すぐにでも出かけたい。
だが、今はもう丑三つ時だ。
こんな時間に行ったところで、華はもう熟睡だろう。
その姿を思い浮かべて、俺は少し頬を緩めた。
翌朝。
俺は、あいつを迎えに行く準備をしていた
(あ、その前に御館様のところに行かないとな。)
そう思い俺は信玄様のところへと足早に掛けていった。
そして。
「信玄様。失礼します。」
その声に信玄は、
「おー、幸か。どうした?」
にこにこしながら俺を迎えた。
「なんでそんな笑ってるんですか?」
信玄様がにやにやしながら俺を見る。
「いーや?幸もとうとうこんな時が来たなぁと思ってな?」
「っ、いや、俺は...」
反論しようとしたとき...信玄様が優しい声で遮った。
「...幸。お前は自分の行きたい道を進め。それはきっとお前にとって、最高の宝物になるぞ。」
優しい笑みを浮かべて信玄様が言った。
「っ、信玄様...」
俺が感動しかけたそのとき、
「そういえば、怪我は治ったのか?」
なんていきなり話題を変えるから。
俺は少し吹き出してしまった。
「ふっ、」
信玄様は目を丸くする。
「なんだ、おかしなところでもあったか?」
「いや、大丈夫です。怪我も治ってます。」
「そうか...」
そしてもう一度信玄様は優しい目をすると、
「さあ、行け。お前のことを大切に思ってくれている人の元へな。」
「はい...!!」
俺は愛しい人の元へ駆け出した。