第20章 桜記念日『後編』❥真田幸村
(はぁ...)
私は反物を縫いながらも、ここ最近の癖になっているため息をまた吐いた。
幸村と別れて、実に一年のときが流れていた。
あの戦から帰って、私はすぐに幸村を探しに行った。
もちろん、佐助くんにも聞いた。
でも、佐助くんは首を横に振るばかりで、何も答えてくれない。
(っ、私はこれから、どうしたらいいの?)
あの時は、ずっとそうやってうじうじと悩んでいた。
今はまだ、あの頃よりはましになっている。
...でも。
「...っ」
幸村がいない。それだけで私の心はまた締め付けられた。
ねぇ、幸村。
遅いよ。いつ来てくれるの?
私はずっと、待ってるんだよ...
_____________________
「はぁ...」
俺は、何回目か分からないため息をついていた。
「あ、幸それで200回目だ。」
佐助が何か余計なことを言っているが、全く頭に入らない。
今は、華の事だけで。
あの戦から帰って、俺はやらなければならないことが山のようにあった。
政務ももちろんそうだが、近隣の国との同盟の締結など、本当にやるべきことがたくさんあったのだ。
それが、1年経って漸く収まろうとしている。
そして、今でも思い出すのは、華の、あの悲しみに歪んだ顔だった。
昔はすぐに華の笑った顔を思い出せたのに、今ではあの歪んだ顔しか、思い出せない。
そんな自分が嫌になった。
でも、あいつを突き放したのにも原因があった。
俺が締結しようとしていた国は、実は信長の傘下の国だった。
今回、信長との同盟が切れたため、こちらとの同盟を組む、という話だった。
だが。
その国の大名は酷く信長を恨んでおり。
時間があったら信長を呪っているような、そんな男だった。
そんな男に華を近づけるのは危ない、という俺の判断と、佐助の後押しからあいつを突き放した。
だが、それもやはり正しい選択だった。
大名が信長に謀反を起こしたのだ。
それはそれは本当に酷い謀反だった。
もし、華を連れて帰って、その大名に見せていたら、と考えると、今でも恐ろしくなる。