第19章 桜記念日『前編』❥真田幸村
「佐助くん!」
佐助くんが立っていた。
「どうして佐助くんが...」
私がそう言いかけたとき、佐助くんがさっと口を開いた。
「細かいことは後で話すよ。時間もない。今は、君を連れて行かなきゃならないんだ。」
「え?」
連れて行くって...?
「連れて行くってどこに...」
また佐助くんが私が聞き終わる前に答えを言う。
「幸村のところだ。」
「っえ...」
佐助くんの口から幸村の名前が出てきたことに驚く。
「佐助くんは...春日山に、いるの?」
私はそっと佐助くんに聞いた。
すると、佐助くんが無言のまま少しだけ頷く。
そして、
「...俺は君の敵ってことになるけど、俺は最後は君の味方だ。だからこうして迎えに来た。」
「え、ほんとにそれってどういう...」
私が言いかけたとき、
佐助くんが叫んだ。
「必殺!煙玉ましまし!!」
「え!?」
そんな声が聞こえたかと思うと私の身体はふわっと浮き上がった。
「!!??佐助くん!?」
そう叫ぶが、上からは何も聞こえない。
佐助くんに抱きかかえられているのは分かるが、一体どこへ向かうのか。
本当に、幸村のところに行くのだろうか。
そんなことを考えていると、ふわっと、地面に降ろされた。
「華さん、ついたよ。」
「!」
その声で顔を上げると...
「幸村...っ!?」
幸村が、私の前に立っていた。
なんだか、泣きそうな、笑いそうな顔で。
「っ、幸村っ...!!」
私はすぐにその胸へと飛び込んだ。
一体ここがどこだか分からない。だけど今はそんなことどうでも良かった。
幸村が私の背中にそっと手を回す。
そして。
「お前に、言わなきゃならないことがある。」
「え...」
言いたいことはたくさんあった。
傷は大丈夫なのか。
どうしてここにいるのか。
そして、幸村は武将だったのか。
でも、その言葉は頭をかけめぐるだけで声には出てこなかった。
会って最初の言葉がそれなの?なんて思ったが、幸村の顔は真面目そのものだった。
わたしはそれにただならぬ雰囲気を感じてしゃっと自然に背筋が伸びる。