第19章 桜記念日『前編』❥真田幸村
すると。
「華...!?」
どこかで、愛しい人の声がした。
そして。
(!!)
「ゆき、むら...?」
目の前で、幸村が立ち尽くしていた。
今まさに信長様と槍で戦おうとしていたところだった。
信長様も怪訝そうな顔で腕を止めた。
幸村は、私を、じっと見つめて、
「お前、なんで...」
と、声を出した。
そして幸村が私の方に手を伸ばそうとした時...
ひゅっ
風を切る音が聞こえて。
幸村の顔が歪んで。
幸村が、倒れた。
「幸村っ...!!!!」
それからは、まるで夢のように時間が過ぎていった。
いや、夢であって欲しいと、私が思ったからかもしれない。
「幸村、ゆきむらっ...」
私は、自分に用意された天幕で幸村のことを思っていた。
幸村は倒れ込んだかと思うと、私が駆け寄る暇もなく、向こうの兵達に連れて行かれた。
私も後を追おうとするものの、
「貴様!戦場で一人で動くという意味を分かっているのか!?」
後ろから信長様の声が聞こえ。
(そうだ。私は、迷惑をかけないっていう理由で、ここに来たんだ。)
その信長様とした約束は破るわけにはいかない。
迷惑をかけたくないのも事実だ。
だから私は信長様に連れられて大人しく天幕に戻ってきた、というわけだった。
何か、作業をしようと手を動かすも、上手く頭が回らない。
(どうすればいいの?私が戦場に来たことで幸村は傷を負ったの...?)
そんな考えがぐるぐるぐるぐる回る。
でも、答えが出る筈もなく。
何度めか分からないため息をついたとき...
「... 華さん。」
「っえ!?」
聞き覚えのある声が聞こえて慌てて後ろを振り向く。
そこには、