第18章 蒼い瞳のその奥を。❥伊達政宗
(政宗に、どうにかして想いを伝える方法ないかな...?)
私は縁側に座ってぷらぷらと足を投げ出していた。
私の頭は最近その事ばかりだ。
(でも政宗は感づきやすいからなぁ...)
私が伝えようとしたらすぐに分かってしまうかもしれない。
(それは、なんか違う。)
政宗には分かられる前にちゃんと自分の思いを伝えたいのだ。
うーん、と私が頭を悩ませていると...
「きゅうん!」
(え?)
いきなりそんな声が聞こえたかと思うと、何かが私の腰に顔をすり寄せてきた。
(!?なに...!?)
慌てて手元を見ると...
「わ、わさび!?」
小鹿が私の腰に顔をすり寄せていたのだ。
「な、なんでわさびがここにいるの...?」
(わさびって家康の御殿にいたんじゃ...)
私が困惑していると...
「っ、わさび!」
そう言いながら誰かが駆け寄ってくる。
「あ、家康...」
家康が私とわさびの方へと駆け寄ってきていた。
家康が私の前に立つ。
「っ、はぁっ、はあっ、あんた足早すぎだからっ...」
そう言ってわさびを抱き上げる。
「い、家康、なんでわさびがここにいるの?」
そこで家康はわさびを抱き上げたまま私に向き合う。
「俺が今日城に行こうとすると、どうしても行きたいってついてきたんだよ。」
家康は心底面倒くさいという顔をしているが、わさびを見つめる視線は優しい。
「でも、そうやって連れてきてあげるの優しいね?」
私が家康に言うと...
「っ...」
家康が少しだけ顔を染める。
(え...)
「っ、馬鹿じゃないの。この子を連れてきたのは気まぐれだから。」
そう言いながらもしっかりとわさびを抱きしめる家康に少しほっこりする。
「ふふっ、家康は素直じゃないね?」
私がそう言うと同時に家康の手の中のわさびがまた駆け出した。
「っあ!わさび!!!」
家康はそう言うとわさびを必死に追いかけていった。