第15章 戯れなんて、言わないで。❥織田信長
私が必死にあの二人を追っていった。
すると、一つのお店の前で足を止めた。
(...?)
(なんだろう)
そっと覗くと、それは私がよく行く反物屋さんだった。
(あ、私のお気に入りの...)
私がそう思っている間に顔見知りの店主が信長様とその女の人の前に出てぺこぺこと頭を下げている。
そして、信長様がひとつの反物を指差して、店主に伝える。
(信長様って反物買うんだ...)
そんな呑気なことを考えている間にも反物を買い終わった信長様とその女の人の二人はまた歩き出す。
(次はどこに...?)
なんだかスパイみたいな気分だが、決して良いものではない。
その次に二人が入ったのがお茶屋さんだった。
そこで二人は仲良さそうに話している。
その楽しそうな二人の姿に胸がぎゅっと詰まった。
(あぁ、これって、浮気されたってことなのかな)
ふとそんな言葉が頭の中にぽんと出てくる。
そんなわけない、そう言い聞かせようとするが、一度出てしまったらその言葉がぐるぐると頭の中を回る。
(っ、...なんだか、惨めだ。)
もうこれ以上二人の様子を見たくなかった私は身を翻して城へと走って戻っていった。
その様子を見つけたのは...
「華...?」
華の、愛しい人だった。