第8章 隙間録~元親編~
女を抱くのはいつ振りだろう。
最後に抱いた女とだって特別な仲だった訳じゃない。
ひと晩だけ…と互いに割り切った関係だった。
だからこうして本気で女を抱きたいと思ったのは久しぶりだ。
「雪乃…そろそろいいか?」
「……、」
彼女を一度イかせた後そう声を掛ける。
本当はもっと時間を掛けて愛撫したかったが、これ以上は俺の方が保ちそうにない。
こくりと静かに頷く彼女を見て、俺はすでに張り詰めている自身を取り出した。
「…そんなに緊張すんな」
「…だって……」
「…まっ、緊張してんのは俺も同じだけどよ」
雪乃の手を取り、自分の胸元へと導く。
ドクドクと心臓が早鐘を打っているのが自分でも分かった。
「…痛かったらちゃんと言えよ?」
「は、はい…」
(…途中で止めてやれる自信なんて無ぇけど)
心の中でだけそう呟き、俺は彼女の秘部へ自分のモノを当てがった…
*
(チッ…やっぱり夢だったか…)
チュンチュンと囀ずる雀の鳴き声で目を覚ます。
解ってはいたが、雪乃との情事はやはり泡沫の夢だった。
昨夜雪乃の様子を見に行った時…アイツが火照った顔で妙な声を出すから、恐らくそれが印象に残ってあんな夢を見たのだろう。
──私…初めては元親さんがいいです…
(…そうだよな…雪乃が俺にあんな事言う訳……)
ハァと深い溜め息をつきながら、ふと自分の下半身へ目をやる。
ソレは呆れる程天を向いていた。
(オンナを知りたてのガキじゃあるめぇし…)
そう自己嫌悪に陥りつつ、俺はのろのろ着替え厠へ向かうのだった…
了