第9章 忍流風邪の治し方
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(…ん…、まぶし……)
「おっ、目が覚めたか!気分はどうだ?」
「……、」
外から射し込む陽の光で目を覚ました雪乃。
すぐ傍には心配そうに顔を覗き込む元親の姿があった。
「元親さん…」
「顔色は大分イイようだが…」
そう言いながら額に触れてくる。
熱はすっかり下がったようで、昨日程体も怠くはなかった。
「もう大丈夫そうです。心配をお掛けしてすみませんでした」
「謝んなって…。でも治ったみたいで良かったぜ」
そう言ってホッと息をつく元親。
彼に今は何時なのか尋ねれば、もう昼前だという答えが返ってきた。
(私、そんなに寝ちゃってたんだ…)
そう思うと同時に、ふと昨夜の出来事が頭を過る。
(…そう言えば昨日……)
自分は確か小太郎と過ごしていたはず。
汗をかいた体を拭いてもらい……そして……
「…っ」
そこで全てを思い出した。
キスをされただけでなく、胸やアソコを触られて…
「…雪乃?顔が赤ぇみてぇだが…やっぱりまだ熱があるんじゃ…」
「だだだ大丈夫です!全然元気ですから!」
「そ、そうか…?ならいいけどよ…」
そう言いつつも不審な顔をしている元親だったが、昨日から何も食べていない雪乃の為、食事を取りに一旦台所へ向かった。
(うぅ…どうしよう……)
昨夜の小太郎とのやり取りが頭の中でフラッシュバックされる。
あんなあられもない姿を晒してしまうなんて…
そもそも彼は何故あんな事をしてきたのか…
(確かに汗かいて熱は下がったけど…!)
本当に熱を下げさせる為だけにあんな事をしてきたのだろうか。
ごちゃごちゃとそんな事を考えているうちに、食事を手にした元親が戻ってきた。
「飯食えそうか?…竜の右目の奴、ご丁寧に粥を用意してくれてたみてぇだぜ」
「……、」
御盆には粥と味噌汁、そしていくつかおかずになる物が乗っていた。
どれも小十郎が作った物らしくとても美味しそうだ。
(後で小十郎さんにお礼言っておかなきゃ…)
頂きますと合掌し、まずは味噌汁に手を伸ばす。
その様子を何故か元親がじっと見てきた。
「元親さん…?どうかしましたか?」
そんなに見つめられては流石に食べづらい。
「いや、その……お前もやっぱり…料理が出来る男が好きか?」
「…え…?」
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