第1章 無口な忍と海賊の親分
「赤い髪の仮面男ねぇ…」
雪乃は森で男たちに襲われそうになったところを、謎の男に助けられたと元親に話した。
恐らくその文を残したのも彼だろうという事も。
そして今自分が置かれている状況。
帰る場所も術も分からない事。
元親はその話全てを真剣に聞いてくれ、最終的にこう結論を出した。
「話は解った。だったらアンタが家に帰れるまで、その身はこの長曾我部元親が預かる事にするぜ」
「え……」
予想外だった。
彼は話を信じてくれただけでなく、見ず知らずの自分の面倒を見てくれるというのだ。
「で、でも…」
「なんだ?何か不満でもあんのか?」
「ち、違います!ここに置いて頂けるのはすごく有難いんですけど…それはあまりにもご迷惑なのでは…」
申し訳なさそうな顔でそう言う名前を見て一瞬驚いた顔をした後、元親はハハハッ!と豪快に笑った。
「アンタ1人増えたところでどうって事ねぇ。ここは男ばっかだし、むしろアンタがいてくれりゃあ野郎共の士気も上がるってもんよ」
「……、」
「それに…困ったヤツを放っておく程俺ァ腐った男じゃねぇぜ?」
「っ…」
ニカッと白い歯を見せて笑う元親に思わずドキリとしてしまう。
彼のすぐ後ろにいた颯も、「さっすがアニキ!」と目を輝かせていた。
「あの…ありがとうございます!私に出来る事なら何でもお手伝いしますので、遠慮せず仰って下さい!」
「ハハッ!ホントに殊勝な嬢ちゃんだなァ…だが気に入ったぜ。困った事があったら俺に何でも言いな。それと…」
そう言いながら、元親は傍にいた颯に視線を移す。
「颯、雪乃の身の回りの世話はお前に任せる」
「えっ!?」
「雪乃も年の近いヤツに世話してもらった方がいいだろうしな」
「わっ、解りました!雪乃さん、よろしくお願いします!」
「こ、こちらこそよろしくお願いします…」
こうして雪乃は家に帰る術が見つかるまで、西海の鬼と呼ばれる元親の屋敷で世話になる事となった。
けれど彼女はまだ気付いていない。
ここが自分の住んでいた世界ではなく、次元の違う異世界だという事に…
続