【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第11章 絶頂エモーション.5
僕は、駆け出して会場を後にした。
入口で受付をしている母を支える、母に似た女性は、夜叉丸さんから聞いていた、会ったことのない妹なんだろう。
僕は、もうここに居ちゃいけない。
最初からここに居場所なんてないって分かってたけど、やっぱり自分の目で確かめたかった。
あの夢にまで見た、恐ろしい父が、老いて死んだこと。
会ったことのない妹のこと。
いつも空気で、自分の保身に走る母親のこと。
よかった。変わってなくて。
もう、悩まない。悲しまない。
帰らない。
僕の居場所は、B-projectだけなんだ。
走った先にあったのは、剛士の車。
僕は迷わず助手席に乗った。
「お疲れさん。よく頑張ったな。」
剛士は泣きじゃくる僕の手をぎゅっと握って、それから車を発進した。
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どれくらい走っただろうか。
ここはどこだろう。
とりあえず海に来た。
剛士が降りるから、僕も一緒に降りた。
平日の、夕方、誰もいない、砂浜。
波の音と、僕達の砂を踏む音だけが聞こえる。
塩っぱい匂いがつーんと鼻をつく。
剛士は、適当な場所で止まって、振り返って、僕を見つめた。
「俺と、本当の家族になろう。」
僕と剛士の間で、音が消えた。
「本当の、家族……?」
剛士は力強くうなづいた。
「ああ。夫婦になろう。」
そう言ったと同時に、剛士は僕を優しく抱きしめた。
「お前を愛してる。絶対に幸せにする。」
僕はもう、色々な気持ちが溢れてわんわん泣いた。
剛士のことが大好きな気持ちや、家族とサヨナラすることを決めたこと。父が死んだこと。THRIVEのこと。B-projectのこと。夜叉丸さんのこと。
「僕も、剛士が居なきゃ、ダメなんだ…っ。剛士と、一生一緒に居たい。」
「そーかよ。」
剛士は僕の首に手を回し、僕にネックレスを通してある指輪を着けた。
「いまは婚姻届も出せねえけど…」
「うん。…剛士、ありがとう。」
僕は嬉しくてはにかんだ。
「あ、でも、夜叉丸さんになんて言われるかな…」
「…夜叉丸さんには、もう伝えた。」
「えっ?!なんて言ってた…?」
「あー…」