【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第11章 絶頂エモーション.5
次の日の朝、みんなでしっかり後片付けをしたあと、別荘を後にした。ダイコクに寄って篤志さんにお礼を言い、マンションに帰ったあとは、そのまま寝た。シャワーを浴びたかったけど、健十が1番に浴びるってうるさいから、譲った。
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どのくらい眠っただろうか。携帯のバイブレーションで目が覚めた。電話だ。
「はい、透……」
「漣ちゃん!!やっと出てくれたわ!あまり時間が取れないから、急いで伝えるわね…心して聞いてちょうだい!」
「夜叉丸さん?!どーしたの?」
最近忙しそうにしていて、メールも生返事、電話も滅多に出てくれなくて、家に行ってもいつも居なかった。やっと声が聞けて、なんかほっとしたのも束の間だった。
「漣ちゃんの、お父さんが、亡くなったわ。」
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どれだけ惚けていただろうか。直ぐに向かうから今日は帰ってきなさいと言うことだった。僕はやっと水を飲んで、シャワーを浴びて、携帯と財布だけ持って、家を出ようと靴を履いた。すると、ドアを開けようとする手を、力強く掴まれた。
「おい!さっきから話しかけてんだろーが。」
「漣ちゃん?どうしたの?」
「行先くらい伝えて出かけてくれ。」
3人の心配そうな目。
いまはその視線がただ痛かった。
僕はまだ昨日の余韻でいつもより重たい瞼を伏せた。
「夜叉丸さんのとこ……」
「連絡、ついたのか。」
剛士が、驚いた声を出した。
「うん…」
「よかったな。ゆっくりしておいで。」
健十は、優しい声で、いつもの様に僕の頭を撫でた。
「うん…」
「漣ちゃん、具合悪いの?」
悠太は、そっと手を握ってきた。
「うん…」
剛士は、いつも通り、ぶっきらぼうだ。
「あんま、無理すんなよ。」
僕はみんなに背を向けて、マンションの下で待つ、夜叉丸さんの車に向かった。