【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第11章 絶頂エモーション.5
「漣ちゃんは、僕のこと、好き?」
いつの間にか、鼻と鼻が擦れるほど顔が近づいていて、僕は目を逸らした。すると、悠太の両手に頬を包まれて、上を向かされた。
「逃げないで……」
僕はなんだか目頭が熱くなってきた。
だって、こんな時でも、悠太と2人きりで、遭難して、告白されてる、こんな時でも。
考えてるのは、剛士のことだ。
剛士、心配してるかな。捜しに来て、怪我をしたりしないかな。焦って、健十と喧嘩してないかな。
ああ、剛士。剛士の元へ、帰りたい。
僕の目からは、大粒の涙が零れ落ちていた。
「漣ちゃん……」
「悠太…僕、好きな人がいるんだ……」
「……うん、知ってた。ごうちんでしょ?」
「うん……」
悠太は鼻声だ。
「やっと気づいたんだ。…もしかして、僕が恋のキューピット?あーあ、損な役回りしちゃったなぁ。」
零れ落ちるような声。悠太の瞳からも、ポロポロと涙が落ちている。
「悠太、ごめんなさい。ありがとう。僕も、大好き。」
僕は、悠太の両手をぎゅっと握った。
「じゃあ、最後にこれだけ、許して。」
悠太は僕の額に口付けた。
見上げた悠太の顔は、涙でぐしゃぐしゃだった。
「ごうちんに泣かされたら、いつでも呼んでね!お仕置するから!」
「悠太のお仕置、怖っ。」
僕達は泣きながら笑った。
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そのあと僕は、泣き疲れて悠太の肩に頭を預け、眠ってしまった。気づいたのは剛士の背中の上だった。
「ごーし…?」
「…ったく、心配かけさせやがって。」
「ごめんなさい…」
周りを見渡すと、悠太は遙日と唯月と歩いていた。
「悠太、起きたんだ。」
「あ?あいつ、最初から起きてたぞ。」
「そう、なんだ…」
眠ったのは僕だけだったのか。
剛士の背中の上が気持ちよくて、僕はもう一度目を閉じた。
「なんで、泣いてたんだよ…」
剛士の呟きは、空に消えた。