【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第10章 絶頂エモーション.4
ミカが、B-projectを辞めるらしい。
午前中打ち合わせのあと、家に帰る途中、近所のカフェでコーヒーをテイクアウトしようと思っていたら、席に座っていたミカに声をかけられた。
「なんだよ、それ…僕は認めないぞ。」
「もう、決まったことなんです。今までお世話になりました。」
深深と頭を下げるミカ。
僕はなんとなく、ミカのさらさらとした茶髪を撫でた。
「MooNsのみんなには話したんだろ?」
「もちろん。ですが納得して貰えませんでした。」
「当たり前だな。」
ミカの悲しそうなエメラルドの瞳からは、いつ涙がこぼれてもおかしくはないように思えた。
「それと、漣さん。あの時は本当に…」
「その話はなしだ。忘れるって言ったろ。」
ミカは正面に座る、コーヒーを持っていない僕の手をぎゅっと両手で握った。
「僕が聞いて欲しいんです。本当に申し訳ありませんでした。今更ですが、衝動的なただの性欲じゃなくて、バンビ時代から漣さんに憧れてました。大好きです。」
「?!…あちっ。火傷した。」
僕は驚きすぎて加減を間違えて舌を火傷した。
ミカは真剣な表情だ。
僕は深呼吸をした。
「ミカ。ありがとう。でも僕、ミカを1人の特別な人として見れない。今までもこれからも、大切な仲間であり、友達だよ。」
ミカはスッキリした笑みを浮かべて、僕の手を離した。
「勿体なさすぎる言葉、ありがとうございます。」
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「漣ちゃーん、おかえりっ。」
「んー。ただいま。」
THRIVEの部屋に帰ってきた僕は、なんだか疲れてしまってソファに寝転んだ。仕事へ出発する準備をしていた悠太が僕の顔を覗き込む。
「どしたの?なんかあった?」
「まーねー。疲れたから部屋にいる。今日は僕もうオフだから。」
「お仕事お疲れ様!僕はこれから行ってくるねー!」
「行ってらっしゃいー。」
健十は雑誌の撮影で居ない。僕は部屋の窓から入る日差しにウトウトして、家のソファで昼寝した。