【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第10章 絶頂エモーション.4
タツが手配してくれたジム屋上のフットサル場で、ジャスティンのチケットをかけた勝負をすることになった。人数が一人足りないので僕は殿くんを呼び出した。
「漣さんのためなら何処へだって馳せ参じますよ。」
キリッとしたアメジストの瞳をキラキラと輝かせて殿くんは僕に言った。
「サンキュな。かわいい後輩を持って僕は幸せだよ。」
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試合の結果は、悠太の一人勝ちだった。
特にタツと、殿くんが奮闘していたが悠太のワンゴールで試合が終わった。僕は途中から飽きてベンチで涼んでいたが。
「ほんとうに、僕でいいの?!やったー!!」
「わっ。悠太。」
涼んでいる僕のところまで走ってきて、ギュッと抱き締められた。
「俺も頑張ったので、ちょっといいですか。」
べりっと悠太を片手で引き剥がし、殿くんが僕を抱きしめた。
「ヨシヨシ。」
なんか犬に見えて頭を撫でたら、見えないしっぽがフリフリしている気がした。
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僕達が喧嘩をしていると勘違いをして慌ててやってきた澄空さんに、悠太が勢いよく問いかけた。
「つばさちゃーん!僕頑張って勝ったよ!ご褒美ちょーだいっ!」
「へ?なんのことですか…?」
「ジャスティンのペアVIPチケット…頑張ってる人へのご褒美なんじゃないの?」
和南がフォローする。澄空さんは首を傾げた。
「あれは社長達のもので…」
「なんだ、そうだったのかぁー。」
暉があからさまに落胆した。
「行きたかったな〜ジャスティン。」
僕が呟くと、澄空さんが目を丸くした。
「透さんも、楽しみにされてたんですね…みなさん、ごめんなさい!!今度、なにかご馳走させてください!!」
澄空さんは深深と頭を下げた後、目をうるませてこちらを見つめた。僕は思わず、その大きな瞳から零れそうな涙を指で掬った。
「泣かないで。」
「透さん…?!」
澄空さんの顔がみるみる赤くなっていく。
急に後ろからどんっと押されて、僕は澄空さんを押し倒した。咄嗟に頭を庇うように、澄空さんを抱き締めたおかげで、頭はぶつけなかったようだ。ポニーテールからフワッと甘い香りがした。
「わ。ごめんっ。」
「い、いえ…!!」
澄空さんは茹でダコのように真っ赤で、ぷしゅーと湯気が出そうだ。僕は後ろを向いて犯人を睨んだ。