【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第7章 絶頂エモーション.1
すると、マンションのロビーで、ソファの陰に隠れてなにやらコソコソと話し込む唯月と明謙を見つけた。剛士は空気を読まず話しかけた。
「こんなとこで何やってんだ。」
「金城さん……」
唯月の視線の先には殿くん。そういうことか。
「…ほっとけ。」
剛士は鼻を鳴らして言い捨てると歩き出した。
「待ってください…!」
唯月が剛士を徐に引き止めた。
「本当に、どうしてトノは、センターを外されたのでしょうか…」
美しいラピスラズリの瞳を伏せて、唯月が訴えた。
すると、悠太が1歩前に出た。
「トノちゃんのダンス、キレッキレですごいよね!あんなに踊れる子、他にいないよね。」
「じゃあ、どうして…」
「もう1人のセンターは、ポカばっかだけどな。」
「わかってないなぁ剛士。魅せ方にコツがあるんだ、よっ。」
健十は余裕のある笑みを湛え、剛士の鼻をつついた。
「っ触んじゃねぇ。」
「魅せ方って、なんですか。」
いつの間にか殿くんが僕達の近くに立っていた。
「弥勒っ!これ、おにぎり作ってきたんだけど…」
弥勒は明謙を無視して健十に話しかける。
「俺、振りは完璧に覚えていました。逆に、健十さんの方が…っ」
「悪かったな、へなちょこセンターで。」
「そこまで言っててないから。」
悠太が仲裁した。僕はあくびをしてソファに腰掛けた。
「でもな、三ツ星レストランのフルコースより、下手くそなオムレツの方が美味しいこともある。」
「?」
はてなマークを浮かべる弥勒に、剛士がわざと通りかかった女性にガンを飛ばした。すかさず健十がウインクして最上級の笑顔で手を振っている。
「ま、こーゆーこった。いくぞ、漣。」
「ほーい。」
僕は立ち上がって剛士の後に続いた。
「あ、透さん。今日はありがとうございました。」
「いえいえー。殿くんのこと、応援してるからな。」
「はい。期待に応えてみせます。」
僕はヒラヒラと手を振って、エレベーターに乗り込んだ。