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【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】

第5章 鼓動アンビシャス.4


健十がバスから出てきて、撮影現場。
台本が変更になつたらしく、スタッフが丁寧に説明している。
健十がずっと前髪を直している。

「おい、愛染。」
「うん、大丈夫、聞いてるよ。」

「本場、よーい、スタート!」

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

健十はやはり話を聞いていなかったらしく、剛士が手順通り橋から落としたのに受身を取らず、川に落ちて溺れかけた。剛士がすかさず飛び込んで健十を救助したが、健十が剛士に怒鳴って一触即発になった。悠太が間に入ってストップをかけて、とりあえず着替えることになった。

「災難続きだ。」
「こっちのセリフだ。お前が手順を確認してないせいだろ。」

口論がヒートアップしていく。

「剛士が勝手に飛び込んだんだろう。俺は助けてくれなんて頼んでない。」
「あ゙?」

剛士はブチ切れる寸前だ。僕は思わず口を挟んだ。

「健十っ。」

でも悠太の怒鳴り声にかき消された。

「いい加減にしなよっ!!」

2人は止まった。悠太は健十を怒りの目で見下ろしている。

「今のはケンケンが悪いよ。謝って。」

静かに叱る悠太から逃げるように、健十は外へ出ていった。
僕は健十を走って追いかけた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

健十は河原で座って水面を眺めていた。

「健十。」

僕は健十の隣に座った。

「どーしたの。らしくないじゃん。」
「俺は元々こーいう人間だよ。」

健十は諦めたような顔をしている。

「違うよ。いつも周りをよく見て、仲間思いの、THRIVEのリーダーじゃんか。」
「随分都合のいい解釈だな。チームとかくだらない。所詮アイドルになるやつなんて、自分のことしか考えてないだろ。」

僕はムキになって反論した。

「そんなこと絶対ない。」

でも健十は水面を見つめたままだ。

「あの監督の言った通り、俺は空っぽ。俺にはほかのメンバーみたいに、拘りも…意地も…内面で人を惹き付ける魅力も、無いんだよ。」
「健十は魅力的だよ。アイドルとして、ちゃんとファンのみんなを夢中にさせてる。」

大きな声を出した僕を、健十は驚いた顔で見つめた。

「ふっ……」

軽く微笑んだ後、真剣な目付きになって、僕に顔を近づけた。

「じゃあ、漣は、俺の中身も知った上で、俺のことを好きだって言ってくれるの?」
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