【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第4章 鼓動アンビシャス.3
悠太とはぐれないよう手を繋いで、しばらく歩いた。
ずっと密林のような生い茂る木々の中を迷っていたが、急に開けた場所に出た。
「わぁーーーっ!」
そこは周りを高い岩に囲まれた広場のような場所で、真ん中にたって上を見上げると、空を丸く切り取ったようだった。ちょうど真っ赤な夕日が山に差し掛かるところで、オレンジ色の空が例えようもないほど美しかった。
「きれい……」
僕は気づけば、涙を流していた。
最近色々あったし、今日の遭難でも、思ったより疲れてしまったのかもしれない。
そんな僕を、悠太は目を丸くしたあと、握った手をぐっと引いて、抱き締めた。
「漣ちゃん。」
「悠太……?」
昨日の晩、バスで頭を預けあった時と、同じ悠太の髪。フワフワして擽ったい。
でも、あの時と違って、僕の身体は一回り大きな悠太にすっぽり包み込まれているし、悠太の心臓から鼓動が伝わってくる。
「僕、ミカりんが漣ちゃんにちょっかい出したって聞いて、身体が沸騰するかと思った。」
「…悠太、怒ってくれたのか。ありがとう。」
悠太は、顔を上げて、その大きなピンクダイヤの瞳で僕を見つめた。
悠太の頬、真っ赤な夕日と同じ色…
「僕、漣ちゃんのことが……」
『来るなぁッ!!』
「?!」
大きな声が聞こえた方を見ると、洞窟が。
もしかして、先程の場所と繋がってる?
「今の声、カズくんだよね?」
「多分…なんか緊迫した感じだった。行こう。」
僕達はくっつけあっていた身体を離し、悠太はいつもの笑顔を顔に浮かべて、僕の分の薪も持った。
「漣ちゃんチャージしたから、元気出た。洞窟の中は危ないから、ここからは僕が持つよ。」
「悠太。ありがとう。でも無理するなよ。いつでも交代するから。」
僕達はまた手を繋ぎ直し、慎重に洞窟の中を進んだ。
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しばらく進むと、和南と倫毘沙に出会った。
「よかったー。みんなに会えた。」
僕は安心してしゃがみ込んだ。
「どうしてここに?」
倫毘沙は不思議そうだ。
「カズくんどーしたの?泣いてた?」
悠太が和南の、翡翠の瞳を覗き込む。
「なっ!!泣いてない!」
和南が慌ててる。珍しい。
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