【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第3章 鼓動アンビシャス.2
「漣、どう?なかなかイイだろ。」
「健十……僕、もうおかしくなりそう…」
健十に腰を抱かれて、逃げられない。
先程からぐいぐい責められている。
僕の鼻の先端に香水を吹き掛けたハンカチを当てながら…
「あ゛ーーーっ。鼻が曲がる。もうどの匂いも同じ匂いにしか感じない。」
「漣ならわかってくれると思ったのに…この新作のフレグランスの爽やかな香り。まさしく俺。」
急なナルシストを横目にこそっと健人と座っていたソファから抜け出すと、今度はふかふかのラグでごろ寝していた悠太に抱え込まれた。
「漣ちゃん、もーらいっ」
悠太の抱き枕にされるのは慣れているので大人しくしていると、眠くなってしまって、その日の記憶が途切れた。
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朝起きると、自室のベッドで寝ていた。
悠太か健十が運んでくれたんだな。
今日は昨日の続きで、稽古に行く日だ。
「沖田役は、透 漣くん。」
澄空さんから歓声があがる。
隣にいた剛士に背中を叩かれた。
「やりましたね!漣さん!」
「うん…嬉しいな。」
「これからほかの配役も発表する。その後台本通りに稽古を行う。」
「はいっ。」
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なんと僕は沖田総司役に抜擢された。
剛士とミカと百は敵対する攘夷志士役だ。
「これが……菊一文字。」
手にした時、僕の中に何かが流れ込んできた。
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〜百太郎side〜
若大路は新選組一派だ。
近藤勇役の松倉健蔵さんが台詞を放つ。
「御用改である!神妙にお縄につけぃ!」
俺達が構える。
同時に漣の剣が、攘夷志士一派の先頭にいた俺の剣とぶつかって、キィンと大きな音を響かせた。
「?!」
「積年の怨み……晴らさせてもらおう。」
そう言った漣の瞳は、いつものような黄金色ではなく、黒くくすんだ紫色に見えた。