【金城剛士】あえてコトバにするなら【B-project】
第2章 鼓動アンビシャス.1
その日は一日オフで、キタコレの部屋ですごした。
でも竜持の記憶は戻る気配がなくて、竜持や倫毘沙のお父さん、夜叉丸さんと話し合った結果、明日から体調を見ながら仕事をすることに決まった。
僕は勿論反対したんだけど、いかんせん違うグループの話だし、倫毘沙と竜持が決めたならと、口を出すわけにもいかなかった。
明日の撮影、剛士とも結局連絡取ってないし、色々不安すぎる。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
翌日の撮影。
ベテランのカメラマンが部下のミスを延々と叱っているのを竜持の機転で収めて、撮影は順調に進んだ。
僕と竜持が廊下で話していると、スタジオの廊下に倫毘沙が話していた竜持をつける記者が現れた。
「是国竜持。記憶喪失らしいじゃねえか。お前のこと、絶対記事にしてやるからな。」
竜持を庇うように前に出た僕を一瞥すると、記者が僕に向けて言葉を放った。
「透 漣か。お前のこともネタにしてやるよ。妙な噂を聞いたもんでな。B-projectの中に彼氏が居るって。お前、ゲイなんだろ?」
……はぁ?
あまりに失礼な記者に失言していると、小さい頃から記者に追い掛けられていた竜持が、スタジオの外へ逃げようと駆け出した。
「竜持!待って!!」
「逃がすか!」
記者が竜持を追いかける。
ワンテンポ遅れた僕に代わって、察しのいい倫毘沙と足の速い悠太が駆け出した。そのあとにMooNsの皆も追いかけていった。
僕も追いかけようとするも、病み上がりの足が縺れて転んでしまった。
「漣!」
剛士が僕を受け止めてくれなければ、顔面から転んでいた。
「剛士?」
心配そうな表情。喧嘩のことなんて忘れて咄嗟に助けてくれる剛士らしさににやけてきた。笑ってると僕を支えてる手をすっと抜かれてしまった。
「竜持、多分大丈夫だね。錚々たる面子だよ。」
「あぁ。」
「僕、ゲイだって噂が立ってるらしい。剛士とこーゆーオフザケしてるからかな。」
「はァ?!?!なんだそりゃ……めんどくせぇ。俺とお前は昔からこーだろ。」
「だよねぇ。」
ふへっと情けない声が出た僕は意外とショックを受けていたのかもしれない。
剛士はふんっと鼻を鳴らしてそっぽを向いてしまった。
大好きで大切なB-projectを守るために、今よりも、更に周りの目を気にしないとダメみたいだ。